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美容皮膚科・美容外科における専門治療 其の2

前回取り上げた通り、美容皮膚科・美容外科における専門治療には様々な方法がありますが、これまでに医学的な効果が証明され、積極的に取り入れられているものは、レーザー治療、ケミカルピーリング、コラーゲンやヒアルロン酸の注入療法、ボトックス療法といえるでしょう。また、それぞれの方法を組み合わせることによって相乗効果が期待できます。ただし、それらの治療法には利点と欠点がありますから、うまく組み合わせることが大切です。

■レーザー治療

レーザーとは電磁波などの放射によって原子が活性化されて放出された光を増幅したものです。レーザーは光の一種なのですが、自然光と違ってレーザー光はある波長の単色光が拡散する事なしに一方向へ直進するという特徴があります。実際の治療では、レーザー光線を皮膚にあてることで、そのエネルギーを熱に変え、この熱によって皮膚の治療を行います。レーザー治療は、肌のシミとり、脱毛、アザの治療、わきが治療に用いられます。

■ケミカルピーリング療法

ピーリングとは皮をむくこと。ケミカルピーリング療法とは、化学物質によって肌の最も外側の表皮だけをうまくけずりとる治療法です。用いられる化学物質はさまざまですが、日本ではグリコール酸を用いたピーリングが盛んに行われているようです。使用する薬の量と塗布している時間によって、取り除く皮膚層の深さを決めます。表皮の再生には少なくとも3~5日間かかります。ケミカルピーリング療法の目的は、古くなった表皮の角質を取り除き、皮膚組織の新陳代謝を高め、新鮮で若々しい皮膚の再生をうながすことで、にきびやシワ、くすみに効果があります。肌のくすみがとれると肌が若返ったように見えます。ケミカルピーリングは化学薬品による皮膚のやけどを人工的に起こしていることになるので、使用方法を誤ると危険を伴います。ピーリング直後は表皮が欠落しているので一時に日光過敏となる恐れがあります。そのまま強い太陽光を浴びると色素沈着をきたすことがあるので、サンスクリーンなどでカバーが必要です。

■コラーゲン注入療法

フェイスリフトをするほど大きくない小ジワやへこみ、たるみなどは、コラーゲンの局所注射によって効果的に改善することができます。コラーゲン腺維線維は立体的な網の目構造をしていて、肌のうるおいと弾力を保つうえで重要な成分です。コラーゲンは皮膚と皮膚と皮下にある結合組織といわれる部分に多く含まれていますが、脂肪組織と違って自家移植は不可能なため、現在のところ牛の皮膚から抽出したものを使用しています。コラーゲン注入療法は、手術時間が短くてすみ、傷あとが残らないなど、手術ダメージが少なく、治療した直後から仕事や学校に戻ることができるという利点がある一方、皮膚のアレルギー反応、異物反応、感染症となる可能性があり、また吸収されてしまうので繰りかえし治療が必要となる欠点があります。

■ヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸は表皮に含まれる粘液状の物質です。コラーゲン同様の弾力性など構造的な役割を担っているほか、皮膚の栄養分の伝達など機能的な役割もあります。ヒアルロン酸もコラーゲンと同じように皮膚のへこみにそって注入することで、肌の見た目の老化を著しく改善する効果があります。ヒアルロン酸はタンパク質ではないため、コラーゲンのような異物反応が少なく、比較的安全に使用することができます。欠点としては、コラーゲンと同様に、自然に吸収されるため、繰り返し治療を行う必要があります。ごく稀ですが、アレルギー反応を起こすことがあります。

■ボトックス療法

ボツリヌス毒素はボツリヌス細菌が生み出す毒素で、神経筋接合部に作用して筋肉運動を麻痺させる働きがあります。この毒素の作用を応用して眼科領域では、まぶたがヒクヒクけいれんする患者さんの治療に使われています。美容外科の分野では、約10年前より顔面の筋肉によってできるシワの治療に使われるようになりました。ヒアルロン酸注入療法やコラーゲン注入療法によるシワの治療は、小ジワなどの表情筋の働きと関係ないものには有効でしたが、筋肉の動きによるシワには効果がありませんでした。それに対してボトックスは筋肉の収縮を抑えるので、ほかの注入材料では治療不能であった動的シワを伸ばすことができます。ボトックスの注射を行うと12~24時間以内に作用が現れ、その効果は約6~8ヶ月間持続します。使用する量は致死量よりずっと低く、副作用の心配もほとんどありません。まゆ毛の近くに注射すると目が開きにくくなることがあるので注意が必要です。ボトックス療法はフェイスリフトやピーリングなど他の治療と併用すると、より良い結果が現れます。

米井 嘉一(よねい よしかず)

米井 嘉一(よねい よしかず)

1958年東京生まれ。慶應義塾大学医学部卒。現在、日本鋼管病院内科・人間ドック脳ドック室長、(株)サウンドハウス産業医。
米井抗加齢研究所所長(http://www.yonei-labo.com/) Anti-Aging Medicine(抗加齢医学)の伝道師としてテレビ、ラジオ、雑誌等で活動中
日本抗加齢医学会HP

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