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クリスタルウォーターズにいってきます♪

パーマカルチャーを取り入れた初のエコビレッジ、クリスタルウォーターズは、ブリスベンから100kmほど北に位置し、「環境負荷の少ない持続可能な先駆的活動を実践している」として1995年には国連より“World Habitat Award”を受賞したとWEBサイトで紹介されていました。

640エーカー(東京ドーム約55個分)という広大な敷地に83世帯200名あまりが生活しており、来訪者用の宿泊施設やキャンプエリアや、パーマカルチャーを学びたい人のための教育施設もあり、コースが開催されています。世界初のパーマカルチャービレッジで、エコな暮らしのデザインを学ぶチャンス ! 絶対に逃せないと早速コースの申し込みを済ませ、次の旅先へと想いを馳せるのでした。

飛行機と電車を乗り継ぎLandsboroughという最寄り駅に着くと、主催者のエヴァンが車で迎えに来てくれていました。私のほか、同じコースに参加するメルボルン出身のシステムエンジニアで禅に興味があるという男性と、ケアンズのデザイナーでヨガの先生を目指しているジュネルが合流し、目的地へと向かいました。

緩やかな丘陵の牧草地帯を抜け、一時間ほどでクリスタルウォーターズへ到着しました。道中にはクリスタルウォーターズを示す目立った看板などはなく、エヴァンに尋ねてみると興味本位でたくさんの人々が訪れるのを快く思わない住民が中にはおり、あえて大きな看板は出していないとのことでした。確かに、自然に溶け込んだ生活を希望する人たちにとってみれば、毎日のように視察団が大型バスで訪れ、観光地化されるようでは、例えエコビレッジでも逃げ出したくなってしまうのかもしれません。

ジュネルと私は同じ部屋になり、荷物を置くなり2人で辺りを散策することにしました。カンガルーやワラビーたちが至る所でくつろぎ、まさに自然との共生です。いつだったか、細いけもの道を歩いていると、私の背丈より大きな雄のカンガルーが目の前でどっしりと構えていました。こちらと目線が合った途端スックと立ち上がり、道を完全に塞がれてしまい、おとなしく引き返したこともありました。

さらに驚いたことは、ビレッジ内では車は時速30kmまでに制限されており、車よりも人と動物が優先されるという決まりがあることでした。私たちが道の真ん中を歩いていても、クラクションを鳴らされることもなく、むしろ全員がすれ違うたびに笑顔で手を振ってくれます。このことについて住民に尋ねてみると、「ここに住む人たちはみんな良い人たちだからね。一番嫌な人でも、それでも良い人の部類に入るから。」と笑顔で応えてくれました。

住民みんなが笑顔であいさつを交わし、譲り合う優しさを持つだけで、こんなにも自分の心の中の角が取れて丸くなれるものなのか、と改めて痛感させられました。

続々とコース受講者たちが集まり始め、ほとんどの人たちはこれからの2週間、キャンプ生活を送るようで、早速テントを設営していました。雨が降ったらどうするのだろう ? 夜中に毒蛇が侵入してきたら ? などと考えていた私は、まだまだ「自然との共生が夢」などとは語れないなと思いながら、キャンパーたちの様子を観察していました。

日が暮れるとビレッジの中心にあるカフェに集まり、地元で収穫されたオーガニック野菜を贅沢に使ったベジタリアン料理を囲みながら、楽しい時間を過ごしました。参加者の中には、インドネシアで既にパーマカルチャーを実践している2人の女性がおり、そのうちの1人は、スマトラ沖地震で壊滅的な被害を受けたアチェのニュースを見たその日に、長年勤めていたジャカルタの銀行員の職を辞し、現地へ直行したという果敢な女性でした。「パーマカルチャーを取り入れた持続可能な生活をデザインし、アチェの復興に取り組んでいる」と語っていました。 集まった人々の目的は様々ですが、向いている方向は同じ。新しい出会いに感謝しつつ、初めての夜は更けていきました。

茶洛

千葉県生まれ、ベイサイドのコンクリートジャングルで育つ。2003年オーストラリアに留学した際アボリジニの自然と調和した生活と出会い、衝撃を受ける。帰国後も循環型生活をライフワークとするべく活動中。パーマカルチャリスト。
※パーマカルチャーとは、オーストラリアで生まれた永続可能な環境を作りだすデザイン体系。パーマネント(永久の)・アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)の造語。

© 日本シティジャーナル編集部