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クリスタルウォーターズで私がみたもの

アラーム時計の代わりに、森の中で響き渡る鳥のさえずりで目を覚ます。それがエコビレッジ、クリスタルウォーターズでの1日の始まりです。朝食までの時間は、コミュニティで暮らす有志の方が行うヨガレッスンに参加する人、また朝日を浴びながら静寂な森の中で瞑想をしている人など、皆それぞれが有意義に朝のひと時を過ごします。

私が選んだパーマカルチャーデザインコースは、持続可能な循環型ライフスタイルをデザインすることがテーマになっており、三大理念である「Care for people」「Care for the Earth」「Fair Share」(人・地球への配慮、公正な取り分)に基づいた授業が行われています。私にとって最も関心の高かった授業は、「水」と「建築」でした。

オーストラリアは「世界一乾燥した大陸」と言われており、ブリスベンも水不足が深刻な地域の1つです。生活用水を確保することが住民にとって重要な課題であり、また僻地で暮らす人にとっては死活問題でもあるのです。この国の一般常識としてシャワーは1人4分まで、洗車をするのにホースは使用禁止、お庭の水やりにスプリンクラーは禁止、散水できる日も番地により曜日が決められています。水資源が豊富と言われている日本に生まれた私は、地元の人々と比較すると水の重要性についての意識が低かったように思います。既に西オーストラリア州の州都であるパースでは、海水を淡水化し飲用として使われており、水道水を飲むと微かに塩味がしました。また当時ブリスベンでは、「下水を浄化処理し、飲用として使うことになるだろう」とニュースで取り上げられており、地元の人が困惑していたのを思い出します。

授業の一環として、パーマカルチャーの先駆者であるジェニー・アレンさんのお宅を訪問した際に、彼女のパートナーが作ったBiolytix*という浄化システムを見せてもらいました。Biolytixは、大きなタンクの中にミミズや微生物を含んだヤシ泥炭からなるフィルターが積み重ねられ、そのフィルターを通ることによって汚水を分解し、最終的にキレイな水にしてくれるという画期的なシステムです。この浄化された水をポンプで汲み上げ灌漑用として利用していましたが、「近い将来、安心して飲める水になる」と言っていました。先のニュースはこのことだったのだと、話を聞いて納得した次第です。

水の出所が分かってしまうと嫌悪感を抱く人もいるかもしれませんが、私たちが普段使用している水も、大きな地球を循環し、浄化されたものです。地球上の淡水の量は、全水量の僅か3%と言われており、しかも私たちが実際に利用できる地下水や川、湖沼などの淡水の量は0.8%に過ぎないのです。規模は違いますが、自然と同じようなシステムによって浄化され、私たちを潤してくれる貴重な水になると考えれば、多少の抵抗は残りますが、下水を浄化した水でも飲めるのかもしれません。

ジェニーさん宅以外にも、完成済みの家から、試行錯誤を繰り返している製作途中の家まで、パーマカルチャーを取り入れたセルフビルド(自作)のお宅を多数見学させて頂きました。既に在るものを有効活用するということは、パーマカルチャー理念の1つ「地球への配慮」であり、不要になった電柱や電車などを無料または格安で譲り受け、建築材料として採り入れた家もありました。クリスタルを埋め込んだ土壁や、竹で作ったタオル掛けなど、家主たちの多種多様なアイディアを拝見し、想像力を掻き立てられとても刺激を受けました。

家作りの先輩に話を伺ったところ、「着工前に必ず1年を通してその場所を観察すべきである」とのことです。なぜなら、季節ごとの太陽の位置や風向き、さらに雨水の流れる方向なども考慮した上で、家をデザインしなければいけないためです。つまり、エネルギー効率を高めるために、日照時間が短く寒い冬にどれだけ太陽光を採り入れることが出来るか、また反対に暑い夏には住居の中に涼しい環境をどうやって作り出すかを考慮したデザインが家作りの重要なポイントとなるのです。

茶洛

千葉県生まれ、ベイサイドのコンクリートジャングルで育つ。2003年オーストラリアに留学した際アボリジニの自然と調和した生活と出会い、衝撃を受ける。帰国後も循環型生活をライフワークとするべく活動中。パーマカルチャリスト。
※パーマカルチャーとは、オーストラリアで生まれた永続可能な環境を作りだすデザイン体系。パーマネント(永久の)・アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)の造語。

© 日本シティジャーナル編集部