音が無い世界

先日久しぶりに帰省も兼ねて、九州でライブをやりました。父から「スケジュールが空いたらでいいから、知り合いの老人ホームで慰問演奏してくれんかね」と頼まれ、玄界灘に程近いグループホーム『だんらん』にバンドでお邪魔して、ミニコンサートを行いました。今まで難民キャンプや障害者施設などでは演奏経験がありましたが、意外にもグループホームは初めてでした（最近は「老人ホーム」とは言わないんですね）。リハーサル中、「すみません、音大きくないですかね?」と聞いたところ「うん、おじいちゃんおばあちゃん、皆、耳の遠かけん（耳が遠いから）大丈夫でしょ」と施設スタッフの方に返されて、思わず笑ってしまいました。

演奏の方はオリジナルソングが中心です。こうしたバンド演奏になじみがないせいか、最初は皆さん固い感じでしたが、なんのなんの、手踊りなども交えて盛り上がっていただきました。演奏終了後、おばあちゃんの一人がニコニコと笑いかけてくれて、何度も「ありがとうございました」とお辞儀してくれました。聞けば2日前に補聴器を入れるまでずっと耳が遠くて音がない世界にいたそうで、久しぶり聞こえてきたのが僕らのロックンロールだとか。VIVAロック！！玄界灘の波しぶきを遠くに聞きながら、楽しいひと時を共有しました。

（ギタリスト　加茂尚広）