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第6話 木の色

木材といえば、落ち着いた色合いの印象が強いですが、海外には、赤や緑、オレンジなど、実にカラフルな色をした木材が存在します。ブラジルで採れるブラッドウッドの木肌は、その名の通り染めたように真っ赤ですし、中米産のパープルハートの鮮やかな紫色は衝撃的ですらあります。時間の経過によって色が変化する木もあります。東南アジア産のチークは、加工したばかりの時は青リンゴのような色合いですが、しばらくすると高級感溢れる、いわゆるチーク色に変化します。アフリカ産のパドック材も、ブラッドウッドに似た鮮やかな赤から、大気に触れることで徐々に深みのあるチェリーレッドに変わっていきます。それぞれの木が最終的にどのような色に落ち着くのかを知っておくことは、素材の美しさを最大限に生かした作品を作るうえではとても重要です。

一方、仕上げの段階で劇的に変化する木材もあります。ウォルナットは、もともとはぼんやりとしたグレー色ですが、仕上げのオイルを塗った瞬間、まるで命を吹き込まれたかのように美しいダークブラウンに生まれ変わります。一度でもこの感動を味わってしまうと、そこに至るまでのすべての苦労をすっかり忘れ、ますます木工の世界に引き込まれてしまうのです。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

© 日本シティジャーナル編集部