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成田大合併の在り方を問う!
小川前市長が提言した11市町村合併案を選択する理由

小林市長合併案
前小川市長合併案

合併問題を市民が議論するのは今しかないという緊急事態が発生!

総選挙の結果に国民が一喜一憂する中、10月26日に投開票された参院選埼玉補欠選挙における投票率が27%という異常に低い数値であったことは今後成田の行政を考える上で重要です。何故なら成田も市町村合併の決断という重大な政治局面を迎えており、無関心層も巻き込みながら市民全員で合併の方向性について議論し、早急に結論を見出さなければならないからです。市長村合併は市民の誰もが避けては通れない最重要課題の1つであり、周辺市町村も含めて数十万人の市民に直接関わる一大事なのです。市が発行している広報なりた10月号では「市町村合併に関する基本的な考え方」と題する小林市長の新しい2市4町案が掲載されていました。市長自ら参加するタウンミーティングも頻繁に行われている最中、11月中旬には1万人規模のアンケートも実施される予定です。それ故、今、市民1人1人が合併問題に取り組まなければもう後がありません。

市長が提案する2市4町案の明暗わかりやすいのは良いのだが…

9月定例市議会において小林市長は市町村合併についてその必要性を初めとし、基本的な合併方式を表明されました。この2市4町の市長案は一般市民にとっても大変わかりやすく、利点が幾つもあります。まず「空港圏」と「生活圏」という枠組みのキーワードを明示し、2市4町がこれらの基準に納まる合併のターゲットであるという考え方を明確に示したことです。この2つのものさしは当然の事ながら成田空港の騒音問題や雇用も含め、市民の生計に関わる全ての課題を含んでいます。また単純な発想ではありますが、市町村合併においては合併後の地形も重要です。2市4町に絞り込むことにより、新提案に基づく新生成田市の地形が成田空港を中心として実に良い円形にまとまるのです。そして以前の11市町村案を大幅に縮小することにより、合併のプロセスをよりスピーディーにまとめ易くなるというメリットもあります。

合併方式については成田空港という日本国の表玄関となる国際空港の位置付けと現成田市の経済力、知名度等を考えると、当然のことながら成田市への「編入合併」という前提が不可欠です。この点においては交渉が難航することが予想される市町も未だに存在する為、合併特例法の期限を視野に入れながら早急に話し合いをまとめるためにも、今回の小林市長案のようなシンプルな合併案が一見望ましく思えます。

一見わかりやすい2市4町案には致命的な大きな落とし穴がある!

ところがこの2市4町案には幾つかの致命的な欠陥が見え隠れしています。最も重大な問題は合併後の人口数です。2市4町を合併しますと総人口がおよそ19万4千人となり、かろうじて「特例市」となる条件をクリアーできる見込みです。しかし一生の内に1回あるかないかの市町村合併を多大なる労力をかけて実施しても現在の成田市総人口の倍にさえ達しないとするならば、何ともお粗末な話ではないでしょうか。日本の玄関として、成田空港をスポンサーする成田市が総人口20万人では微弱であるという印象がぬぐえないということです。総人口数は日本国家及び千葉県における成田市の位置付けや潜在的な行政力に多大なる影響を及ぼします。だからこそ全国で推進されている大規模な合併政策は、今や最低でも30万人から50万人の人口レベルを目指しています。行政府間における競争力も問われるこれからの時代において、成田が十分な経済力を維持してリーダーシップを発揮するためには、総人口は多ければ多いほど良いと言えます。

また空港圏の定義付けにも問題があります。確かに成田空港を中心として半径12kmの円をコンパスで描くと栄町と蓮沼村は除外され、横芝町はごく一部分しか入りません。しかし空港圏は「航空機による騒音対策などの共通する行政課題」が大きなテーマの1つとして掲げられており、これこそ空港圏を単なるコンパスで描かれた正円形では考えられない理由なのです。滑走路の位置付けを見てもわかるとおり、成田空港の滑走路は北西から東南の角度で斜めに設置されており、騒音問題も滑走路と同方角に延長しているのです。例えば太平洋線の場合、通常北米から成田に向かう航空機は日本に近づくにつれて高度を下げ始め、九十九里の海岸を横切る形で北総の利根川方面に向けて更に高度を下げていきます。そこから旋回して神崎町、下総町、栄町近辺の上空を通り抜けて成田空港の滑走路に向けて着陸態勢に入るのです。その為、離発着時における騒音問題の被害を直接受けると言う点においては、当然の事ながらその影響を多大に受けている栄町や横芝町なども空港圏の一部とみなさなければいけないはずです。

また現在1市9町の市民団体や市議会から合併の申し入れがあるということですが、既に小川前市長が空港圏の主体は2市2町2村と提言し、一旦他市町村から受け入れられた経緯があるのですから、その枠組みを安易に否定は出来ません。或いは成田市独自の提案として新しく「空港圏」を2市4町と定義づけるならば、それなりの明確な理由を示さなければならないのです。ましてや成田市は空港からの経済的メリットをある意味で独り占めし、不均等に財政源を潤してきた背景があるのですから、その立場を考慮するならば成田市が周辺市町村からの合併リクエストをお断りすることは道義に反します。成田にはまだ計り知れぬ底力が残っていることを自覚した上で、もっと積極的に合併の手を差し伸べたいものです。

世界有数の島国日本だからこそ無くてはならぬウォーターフロント

最後に見逃してならないポイントは、日本が島国であり、日本国民は心のどこかで常にウォーターフロントを求めているということです。世界を見渡すならば、およそ大きく栄えている町の大半は海や湖、川沿いに発展しています。日本列島を見渡してもウォーターフロントに恵まれていない県は関東と中部のごく一部にとどめられます。それ程日本人にとって海や川、湖からなるウォーターフロントは大切な地理的条件なのです。今や成田市にとっても無くてはならないものが水資源であると断言できます。北は日本を代表する利根川の河川、そして東南にはこれも抜群の知名度を誇る九十九里の海岸に隣接することにより、成田市の将来構想に雲泥の差が生じます。例えばつい最近、都心部と地方を結ぶ物流の手段として利根川の水路を活用する方法が研究され始めました。もしこれが実現すれば輸送コストの節約と交通渋滞の緩和に一役買うことができるけでなく、陸空だけに頼っていた成田に新たなる輸送手段としての選択肢が与えられることになります。また九十九里はこれから開発が始まろうとしている貴重なシーサイドタウンです。それ故、利根川の広大なウォーターフロントを保有する栄町と太平洋に面する九十九里にアクセスを与える横芝町の存在は貴重です。成田市が空と陸のアクセスに優れた立地条件を備え、更に海と川の双方からアプローチできる可能性を

持つならば、将来の展望はより面白く明るいものとなります。

小川前市長案による11市町村合併案に1票!

上記の理由をつきつめていくと結論はただ1つであり、それは今回提示された小林市長の2市4町の合併案よりも既存の2市8町1村の方に分があるということです。2市8町1村案の総人口はおよそ25万人ですが、この5万人の差が実に大きいのです。また横芝町や栄町と合併することにより市全体の地形は多少いびつになったとしても、同じ空港圏にある市町村として位置付けることは理にかなっており、2町の合併意向も尊重した形になります。その結果、広大な利根川のウォーターフロントと九十九里へのアクセスを同一市内で確保できるだけでなく、総人口も25万人と膨らみ、日本国内でも市原市や水戸市等と同規模に位置付けられる中規模都市として、新たなるステータスを確立することができるのです。

小林市長の2市4町案が評価に値することは前述した通りです。しかしながら以前より2市8町1村案が存在し、対外的にも公示されていた経緯があるため、まずこの2案を十分に比較検討することが出発点となるべきではないでしょうか。そのプロセスをバイパスして「生活圏」とか「空港圏」と呼ばれる定義のあいまいな言葉を尺度に使った縮小合併案のみを前面に押し出しても、合併交渉の相手先を単なる偏見によって見誤るリスクを増やすだけです。この際割り切って2市8町1村案を再度見直すべきです。そして民意を問うとするならば、今回の2市4町案と、小川前市長の提示した2市8町1村案のどちらが良いかを採択するべきです。海と川を心のどこかで恋しく思う日本人なら、間違いなく後者の選択に踏み切るはずです。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部