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目指せ!30万人中核都市
市町村合併を成功させるための緊急実践課題とは

その場凌ぎの成田空港はいつの日も問題が山積み

羽田空港から韓国の金浦国際空港に向けてシャトル便が毎日飛び始めました。首都圏の市民の大半は羽田が純然たる国際空港になることを望んでいるため、当然の時代の流れなのでしょう。羽田空港は戦後、長年国際空港として利用されてきましたが、その国際線の機能を成田に奪取された汚名を返上するかのごとく、今、猛烈な勢いで拡張工事が進められています。空港機能の利便性や快適度を総合的に評価すると成田を凌ぐことはもう時間の問題と言えます。

その決定的要因はやはり土地のロケーションです。空港建設に非協力的な所有者が多い農地に囲まれた成田とは違って、羽田には埋立地という広大な敷地の強みがあります。その為、羽田と成田空港とでは、何時の間にか潜在的成長力に大きな差が生じてしまいました。成田空港の決定的な弱みは拡張性に乏しいことです。設立当初から土地問題の絡みで開発の規模が限定されてきた為、将来の成長を無視したその場凌ぎの設計を余儀なく強いられてきました。その結果が今日の第1ターミナルです。道路アクセスの不備と将来の拡張を無視した小規模な建物のレイアウトがたたり、今日どんなに拡張工事を試みてもその使い勝手は殆ど向上しません。その教訓は第2ターミナルの設計においても活かされませんでした。確かに道路アクセスは大幅に改善されましたが、1階の到着ロビーが決定的に狭すぎて今後拡張できない構造なのです。最低でも既存フロアースペースの奥行をおよそ3倍まで拡張しないと、近代空港にふさわしいゆとりある空間を提供することはできないのですが、既に時遅しです。

成田周辺市町村との合併を考える際に、空港問題と同様に、その場凌ぎでとりあえず小規模に取り繕ってしまおうという考え方は危険です。一旦合併計画が締結すると、そう簡単には再度拡張できなくなります。あくまで日本という国家全体における成田市の位置付けを長期的展望に立って見据えた上で合併の範囲を決断すべきです。そして成田空港は国民皆のものであるという前提のもとに周辺市町村を取りこんで皆で協議しながら新生成田市の適正規模を見出す努力が必要です。

成田市大合併におけるスケールメリットの利点

合併の利点は住民の立場から見れば利便性の向上が最も大事なポイントとなります。近年、住民の価値観も多様化を極め、行政に求めるサービスもより高度化しています。それ故合併によって、単に他の市町村が所有する図書館やスポーツ施設等の公共施設が利用できるようになったとか、救急車や消防車が来るようになった、というハード面だけでなく、住居や雇用に関わる法律問題、情報インフラの整備、学童の国際化教育、高齢化社会への対応等、ソフト面におけるサポートの向上も望まれています。これらのプロジェクトの実現には高度な技術と経験、能力を有する公務員の採用が不可欠であるため、より優秀な人材を確保するためにも大規模な合併が望ましいのです。

行政面における利点も、スケールメリットにより公務員や各種委員会の数が全体的に減少するため、重複する経費が回避され、行財政の効率化が進むことだけにとどまりません。特に広域的観点に立った大規模な道路工事や公共インフラの整備、土地のゾーニング等を一貫性のあるポリシーに基づいて実施する事、水資源の汚染等、複数の市町村をまたがる環境問題なども合併により一気に施策を有効に展開できるようになります。また商工会や観光協会の規模が拡大し、より大掛かりなイベントを実施して地域の振興に貢献することもできるでしょう。

競技場等の大規模な施設の効率的な配置はその一例です。東京の府中市はJリーグに所属する東京FCの大サッカースタジアムの真横に奥行300m程ある広大な芝生の運動場を保有しています。この巨大フィールドが毎週末、近隣のジュニアサッカーチームの練習の為に開放されています。総勢数百名に及ぶ10数チームが周辺地区から訪れ、毎週末のびのびと練習に励むことができる恵まれた環境を目にする時、単に府中サッカーリーグの将来性だけでなく、大型都市の展開力に目を見張らざるを得ません。成田市も大型合併により、ワンランク上の市民サービスを提供したいものです。

乗り越えなければならない合併後のディメリット

市町村合併による最大の課題は、最も財政力がある成田市により多くの経済的負担がかかるということです。各種助成金等の経済的負担が大きい市民サービスの大半は、合併後は最も高いレベルのサービスを提供していた市町村に合わせて継続して提供することが一般的となっています。その結果、合併市全体の財政負担が増すことになりますが、これは一概に市民サービスが低下するということではなく、市全体の財務体質が目に見えぬ所で悪化するということです。行政のイメージアップ、経営手腕によるコストダウンや企業の誘致などをもってそのマイナス分を埋め尽くすだけのプラス効果をもたらすことができるかどうかが、財務体質向上の鍵となります。そして本来共有するはずの公共施設も実際は偏在しているため、合併後それらの適正配置や統廃合が難しいという問題もあります。

当然のことながら新市として合併後、如何に一体感を保つか、という根本的な課題も常に残ります。実際、市町村合併後も商工会議所や農協が合併を拒んだ例が全国で幾つも見受けられます。市民の心に根付く合併に対する偏見は、意外な分野で合併後に現れてくるものです。

30万人中核都市に向けた大規模な合併のすすめ

「市町村合併推進指針」では、人口30万人都市の定義として「地方中核都市と周辺の市町村で一つの生活圏を形成している場合」と明記されています。この中核的都市とは都道府県の発展の中核となる都市という意味で使われており、その30万人都市こそ正に成田市の目指すビジョンなのです。政府より中核市の指定を受けることにより多くの権限の委譲が行われ、住民に対してより身近な行政を行うことができるようになります。また中核市よりワンランク下には人口20万人以上という特例市があり、このハードルを成田は今、合併によって乗り越えようとしている訳です。既存の特例市の中には函館市、水戸市、前橋市、川口市、佐世保市等が含まれています。

しかるに巷では「生活圏」や「空港圏」という2つのキーワードが飛び交い、合併地域を人口20万人にも満たない2市4町に限定しようという動きがあります。実際は空港圏の定義は2市4町ではなく、2市6町1村から構成される「成田空港圏自治体連絡協議会」の顔ぶれによって決められています。また成田の「生活圏」は栄町も含めて明らかに2市4町より大きいのです。いずれにしても、最低限でも総人口が20万人を優に越えないと特例市の条件をクリアできない可能性が残るので注意が必要です。

今日の中国の目覚しい発展をみても分かるとおり、所詮、広大な土地と人口を持つ国が最終的に最も大きな影響力をもつ国家となっていきます。市町村についても同等のことが言えます。より大きい土地を保有し、より多い人口を持つ市町村こそ、時間が経つにつれて力強い総合力を発揮するようになります。だからこそ成田は30万人都市を目指すべきなのです。

成田市大合併が成功する為の緊急実践課題3項目

人口20万の特例市、及び30万人の中核市を目指した成田市大合併が成功する鍵は以下の3項目にまとめられます。まず5年後10年後の将来を見据えた上でのマスタープランを早急に作ることです。合併対象となっている地域の広域的な発展計画を様々な角度から議論した上で、新たに未来像が分かり易く見えてくるプランを草案し、市の傘下に入る自治体はその新マスタープランとの整合性を持たせるべく軌道修正を行うのです。その為にも合併協議会発足当初から、将来の街造りの構想について積極的に意見交換のできるメンバーを全ての市町村から選抜して戦略企画部隊を作ることが大事です。

次に外部から行政のブレーンとなる合併専任のコンサルタントをヘッドハンティングすることです。市町村合併は大変複雑な要素を多く抱えており、市民や市議会議員同士の話し合いになるとどうしてもお互いの利害関係にぶつかり、感情論に走りやすくなります。その為、直接の利害関係を持たず、優れた合併コンサルタントにシンクタンクの役割を果たしてもらう訳です。コンサルタントの費用は半端ではありませんが、無駄な時間を浪費することを考えれば、最終的にはコストダウンに繋がります。

最後に最も大事なポイントは成田市界隈の住民同士が話し合う機会を持ち、お互いを必要としているという意識を心から持つことです。既存の成田市内だけを見渡しても市街地区と農村地区とでは市民の考えた方に大きなギャップがあります。しかし例え考え方は大きく違っていたとしてもお互いが必要とし合っているという現実に相違はありません。空港職員もニュータウンの市街化地域に住む市民も皆、成田の自然が好きですし、新鮮な成田の農作物をこよなく欲しています。また農村地区には空港や駅の周辺に無い素朴な自然の美しさがあります。一方農村地区の市民も一時は外来者と思えた市街地区の市民が携えてくる都会のレジャーやインターネット技術等を共に楽しみ、ライフスタイルに多くの共通点を見出すようになりました。

同様に成田市も成田周辺の市町村を必要としています。成田市は空港をベースに殿様商売をしている訳ではなく、同じ土俵の上に立って、お互いを必要としているのだという認識を強く持つ必要があります。今までの偏見を取っ払い、「皆で日本を良くしよう」、「皆でお互いが幸せになれるように頑張ろう」、という気持ちになる時、初めて大規模な合併が実現します。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部