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温泉大国日本に、成田ありき!PART1
千葉県の経済復興は成田のデザイナーズ温泉から始まるか!

温泉大国、日本。今、その日本列島がデザイナーズ温泉ブームに沸いています。巷の本屋には露天風呂付高級旅館や日帰り温泉関係の雑誌が溢れ、日本人の温泉好きを物語っています。しかも今回のブームはこれまでの温泉人気とは一線を画しており、単に今までのように大自然の産物である天然温泉の質そのものを追求するだけではなく、くつろぎをもたらす贅沢な空間の一部として温泉施設を捉えている所が興味深い点です。即ち、心の癒しを求めた高級リゾート温泉ブームの到来なのです。これらのワンランク上のリゾート温泉は「デザイナーズ温泉」とも呼ばれ、著名な設計事務所によって和風モダンなテイストを重点にデザインが工夫されています。この「デザイナーズ温泉」が流行る理由には幾つかのキーワードがあり、そこに新時代の感覚を見出すことができます。例えば「癒しの宿」、「大人の隠れ家」、「個室露天風呂」、「極上の料理」、そして「自然との一体感」等は、これまでの常識を覆す程の豪華な施設とサービスを求める現代人の気持ちの現れであり、それが昨今の温泉人気の原動力となっています。

事実、これらのキャラクターを兼ね備えた温泉旅館は異常とも思えるほど人気が沸騰し、伊東温泉の「月のうさぎ」や箱根宮ノ下温泉の「箱根吟遊」など、半年から1年以上先まで予約が一杯で、宿泊を断念せざるを得ない温泉旅館が幾つも登場しています。その反面、熱海、伊東、南紀白浜等、老舗の温泉リゾートの多くは衰退を極め、廃業、倒産に追い込まれた温泉旅館も少なくありません。団体行動を中心とした慰安温泉旅行から、個人の安らぎを求めることを目的としたくつろぎの旅に利用形態が変化してきており、従来の大型旅館が提供してきたビジネスモデルが全く通用しなくなってきたためです。それは時代が変わると共に、日本全国における温泉の勢力図が全く塗り替えられてしまったことの証でもあります。

残念ながら、千葉県には高級温泉ブームの時流に乗って人気が沸騰するような温泉スポットはなく、房総半島全体の観光業そのものが低迷しているというのが現実です。朝日新聞が集計した「行ってみたい千葉の温泉」リストには、1位の養老温泉を始めとして、銚子、鴨川、勝浦、白浜、白子、千倉、七里川と続きますが、これらは人気が既に離散してしまった温泉ばかりであり、今日雑誌に取り上げられてまで話題に上るような温泉施設は殆どありません。隣の茨城県では以前から人気の高かった五浦観光ホテルのような大型旅館でさえ今や老朽化してしまい、観光客の足が遠のいています。そして千葉県の北総においては元々人気を誇る天然温泉が皆無であるため、どうしてもこの「デザイナーズ温泉ブーム」の波に乗れないまま今日に至っているのが実情です。しかし千葉県は太平洋に面し、海や山、川等、無数の観光資源に恵まれているため、その天与の大自然を上手に活用すれば、現代人の感覚にマッチしたリゾート温泉をいくらでも開発することが可能ではないでしょうか。

千葉県は温泉宣言によって経済危機から救われるか?

財政危機に直面している千葉県経済を活性化させるためには、民間主導において全ての産業を総合的に発展させて、国内の地域間競争や海外勢との競合に絶えるだけの力を蓄えることが不可欠と言われています。中でも観光業の発展は最重要課題であり、千葉県経済活性化の鍵を握ると言われています。また小泉首相も自ら宣言したように、観光事業は国家戦略事業として位置付けられています。観光事業とは今や世界最大の産業であり、行政と民間が一致した思いをもって取り組み、工夫をこらした企画を盛り込むことにより、官民一体のプロジェクトとして成功させることができます。例えば館山市では館山湾に長さ640mにも及ぶ多目的観光桟橋を建築し、そこに遊覧船を発着させて全国から観光客を呼び込むだけでなく、ヨットが停泊できるハーバーを設け、寄港した旅客船向けの各種イベントも提供するという構想があります。また鴨川では温泉タウンのイメージを一新すべく、「温泉宣言」というプロモーションが街ぐるみで行われ、新しい試みに力が注がれています。昨今の温泉ブームにより温泉がなければ観光地から客足が遠のいてしまうため、昨年4月に15の旅館が共同で市内の山中から湧き出す源泉を毎日30トン、タンクローリーで輸送し、各旅館に配送することにしたのです。既に温泉を掘り当てている7軒の旅館と共に、街ぐるみで「温泉タウン」であるというイメージを訴えていく戦略です。これらの努力が功を奏してか、ここ数年間続いてきた宿泊客の減少は横ばい、もしくは微増に転じてきました。これらは皆が一致団結すれば、観光都市にリバイバルをもたらすことができるという証です。

観光立国日本の玄関として成田はどうあるべきか?

大規模な集客能力を持つ新東京国際空港と成田山新勝寺の双方が存在する成田市にとって、観光は正に最大の産業であり、成田は日本の歴史と文化に結びつく伝統行事やお祭りなど、各種観光資源に溢れています。しかし現実には新勝寺の来拝者も頭打ちとなっており、成田空港の将来も民営化による今後が未知数であるため、新勝寺と空港コンビへの過度な期待は禁物です。むしろ周辺のレジャー施設や交通インフラを整備し、今までとは次元の違うアプローチをもって、より多くの来訪者が成田で時を過ごしたくなるような方法を模索するべきでしょう。

しかし中途半端な内容や、老朽化した施設が目に付くレジャー施設が殆ど、というのが成田近郊の現実であり、これは千葉県全体に共通する問題でもあります。ちびっこ天国にせよ、マザー牧場にせよ、房総風土記の丘にせよ、一般市民の人気が沸騰するような施設内容とは程遠いと言えます。これらの陳腐化した施設を蘇らせるためには、何はともあれレジャー施設そのもののグレードを、今風のレストランや宿泊施設等を含めることで、誰もが満喫できるレベルに押し上げなければならないのです。

これらの現実を踏まえますと、観光大国、成田の復興の鍵を握る一つの手段として、空港や新勝寺を訪れる人々をもてなす為の最先端デザイナーズ温泉を市内に建設する構想が浮かび上がってきます。地の恵みである天然温泉は、体の清めという意味においても神仏の参拝とは切っても切れない関係にあるだけでなく、成田空港を訪れた旅客の旅疲れを癒す格好の場となること請け合いです。それ故、北総の中心地とも言える成田に現代の時流に見合った本物のデザイナーズ温泉が登場すれば、それを起爆剤として新しい街興しができるのではないかと考えても不思議ではありません。

成田に最先端のデザイナーズ温泉リゾートを造ってみたい!

無論、温泉地として成田の知名度は現在、皆無と言われて当たり前です。養老温泉や勝浦温泉のように元々温泉郷として存在する町ではないからです。しかしつい先日も朝日新聞に一市民の声として、「成田市の湯では、のどかな露天風呂から富士山を望むことができ、夕焼け時は絶景」と掲載されていたように、県内のどの温泉にも負けない潜在的な自然の恵みと総合的なインフラを成田は既に持っているのです。

九州の温泉といえば、昔から別府が有名でした。ところが最近になって勢力図が塗り替えられ、何時の間にか国内屈指のリゾート温泉として別府に代わり湯布院の名前があがるようになりました。そして今日、その人気度においては別府温泉を圧倒して凌ぐだけでなく、温泉の総合ランキングでも常時、全国トップクラスに選ばれる程の力をつけてきたのです。その成功の秘訣は地元のマーケティング努力にあったと言われています。別府は海に面した傾斜地にあるため、景色が大変良く、他の温泉との差別化が図りやすくなっています。ところが湯布院は大分県のほぼ中央にあるため、海の景色は無く、別府と比べると一見、競争力において見劣りを感じてしまうかもしれません。しかし見方を変えると、大自然の山の中にある湯布院はそれなりの優雅な情緒が漂う温泉とも言えるわけです。そこで湯布院の温泉郷は街ぐるみで温泉人気の原点に戻り、四季の風景や自然の恵みと温泉文化を調和させた全体的な街づくりに着手しました。そしてその落ち着いた雰囲気を売りにした上で、共通の入湯券や食事券制を導入して湯布院内、どこでも使えるようにしたのです。そのような中で「玉の湯」が国内温泉ランキングで常時トップ10入りするようになり、全国的に湯布院の知名度が上昇したことで、今では年間400万人以上の来訪客がある国内トップクラスの温泉タウンに生まれ変わりました。

癒しの空間が広がり、大自然との一体感を覚えるのどかな環境の中で、そこに温泉が沸き出で、そして自然のそよ風に触れながら露天風呂を楽しむことができれば、それだけでトップクラスのリゾート温泉となる可能性があると言っても過言ではないでしょう。無論、日本屈指のデザイナーズ温泉都市、成田を実現するためには、地域住民と役所の理解と協力が必要です。また外来者は来てほしくないという排他的な感情を捨てて、街全体が日本人、外国人誰でも迎え入れてもてなしたい、という温かい想いを持つことが大事です。そして外国語での案内板や地図等も含め、外来者に対しても優しい街づくりを心がけることにより、空港利用客の方々が成田を人気観光スポットとして認識し、時間の許す限り立ち寄りたい、と思うようになれば、それが観光都市、成田のリバイバルの始まりではないでしょうか?

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部