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温泉大国日本に、成田ありき!PART2
千葉県の経済復興は成田のデザイナーズ温泉から始まるか!

千葉県成田 大和の湯
露天風呂『富士見の湯』

露天風呂『富士見の湯』

デザイナーズ温泉 千葉県成田 大和の湯 へ

ここ最近、最高級レストランやリゾートホテルの特集、果ては世界トップクラスの海外リゾートガイド等、優越感を味わいながら極上のもてなしとくつろぎを紹介した雑誌がやたら本屋で目につきます。経済大国日本と言われながら、所詮先進国の中では最も貧弱な住宅環境を強いられている日本国民だけに、その鬱憤をはらすかのごとく、小さな家から脱出する時だけは最高のものを体験したい、という願望が根底にあるようです。この高級志向の延長線に昨今のデザイナーズ旅館ブームがあります。それは、年に数回程度、時間をかけて温泉に行くなら、今までのような経済性重視の団体温泉旅行ではなく、プライベート空間を大切にした部屋数の少ない人気のデザイナーズ旅館で、思わず舌鼓をしてしまう極上の食事を頂き、心地良い刺激を与えてくれるデザイン空間の中でくつろぎながら、リッチな一時を満喫しようとする気持ちの現われでもあります。

デザイナーズ旅館の象徴である群馬県谷川岳の別邸仙寿庵

これらのデザイナーズ旅館は著名な建築家や空間デザイナーによって仕掛けられ、そのブームにあやかって見事なデザインを誇る和風モダンの旅館が全国各地に登場するようになりました。例えば石川県山代温泉の「べにや無何有」、広島県宮浜温泉の「石亭」、山形県湯田川温泉の「湯どの庵」、群馬県谷川温泉の「別邸仙寿庵」等、デザイナーズ旅館の人気は衰えを知りません。中でも谷川温泉の「別邸仙寿庵」はJTBの人気宿アンケートで常に上位を占めるほどの人気を誇っています。雄大な谷川岳の大自然の奥地に佇むモダン和風建築を代表するこの作品は、創業以来これまで多くの旅人に最上級のくつろぎを提供してきました。およそ8千坪の広大な敷地に個室露天風呂付の客室がわずか18室しか存在しないことこそ、贅沢な造りを極めた結果と言えます。そして建物には既成概念を超越したアイデアがふんだんに盛り込まれ、夜になると幻想的にライトアップされる高さ8mのガラス張り曲面廊下や、江戸墨流しの手法を取り入れた天井や漆喰と京土壁、そして金銀箔の伝統芸をふんだんに盛り込んだ内装の工作等、その美術館さえも彷彿させるようなデザインは訪れる人に感動を与えずにはいられません。正に日本の伝統的建築技術と近代的要素を統合させた代表作だからこそ、仙寿庵は1998年日本建築仕上学会賞を受賞するという快挙を成し遂げたのです。

和風モダン建築の第一人者羽深氏が明かす人気の秘密

羽深隆雄氏

このデザイナーズ旅館のブームを巻き起こし、個室露天風呂人気の先駆けともなったのが、和風モダン建築の第一人者と言われ、別邸仙寿庵を設計した羽深隆雄氏です。羽深氏は1975年に東京で栴工房設計事務所を設立して以来、モダン建築に自然素材をふんだんに取り込んで和と洋の伝統を織り交ぜた空間デザインを幅広く手がけ、数々の著名な作品を手がけてきました。また天皇陛下が宿泊される日本最高峰の旅館を複数設計した建築家としても有名です。

羽深氏の信条は、一言で言えば、「いつまでも記憶に残る感動」を旅人に与えることです。感動の無い旅は記憶に残らず「失敗」であると断言する羽深氏だからこそ、訪れる旅人に感動を与える為にも、他では味わうことのできない独自の空間として、誰もが驚嘆するような強い印象を残す工夫を試みています。そのイメージの呼び水として、羽深氏は必ずと言って良いほど手業の技法を取り入れています。機械でスペック通り生産される既製品とは違い、この人間の手による細やかな技巧に、見る人は心を動かされるものです。羽深氏の作品は一つ一つが他者の物まねではなく、全てオリジナリティー溢れた建築技術を凝らして完成させることを目指しており、それが建築業界でも高く評価されている秘訣と言えるでしょう。

今日、人気が沸騰している温泉と、客足が既に遠のいてしまった温泉とでは明暗がはっきりとしています。人気が離散してしまった温泉の共通点として羽深氏は、「多くの旅館の客室や大浴場は、どれも同じに見えて特徴がない。印象が薄い。住宅にもくつろぎの空間を自ら演出する人たちが、哲学もこだわりもない温泉でお金を支払って満足できるのか?」と問題の根本を鋭く指摘しています。それは逆に感動を呼び起こす要素さえあれば、デザイナーズ温泉として今後、人気が復活するチャンスが十分にあるということなのです。

成田市唯一の天然温泉旧成田温泉と大和の湯の歴史

一昨年前、ふとしたきっかけで羽深氏が成田市北の外れの大竹にある成田市唯一の天然温泉施設「大和の湯」を訪れることになりました。この温泉は以前「成田温泉」と呼ばれ、その歴史は30年程前まで遡ります。どういうきっかけで県立公園と田んぼに挟まれた細長いサツマイモのような地形の小さな土地において温泉が掘削されたか今となっては定かではありません。しかし昭和51年に発行された週刊現代の成田温泉特集記事を読む限り、その当時、成田市の大竹にアジアで最大の歓楽街を造ろうという大胆な計画があったようです。そのニュースを嗅ぎ付けて投機的な資金が出入りしているうちに母体が経営難に陥り、単なる田舎の温泉施設として運営されるようになりました。しかし実際はその後何度も経営者が変わるという事態となり、最終的には裁判所による競売によって温泉付の土地が落札され、現在の「大和の湯」に至っています。

数多くの温泉設計を手がけてこられた羽深氏ではありますが、大竹を訪ねて来られた当初からこの大和の湯の土地柄が大変気に入ったようです。県立風土記の丘や坂田ヶ池公園に隣接し、目の前は田園風景を一望、その向こうに印旛沼と富士山を見渡すことができるロケーションは、正に感動を呼び起こし、心の癒しを感じるにふさわしい場所と見受けられたのでしょう。同時に羽深氏は設計者としてこのいびつな地形に妙味を覚え、今までに無い、より面白く、より奇抜な和風モダンのデザインにチャレンジできると確信するに至りました。そして瞬く間に羽深氏の構想の中に、大竹という地名にちなんで竹をふんだんに取り入れ、鉄筋コンクリート造の建造物とブレンドさせた不思議な一体感をかもし出すような斬新なデザインが芽生えてきたのです。それから間もない平成16年6月7日、大和の湯は国内屈指のデザイナーズ日帰り温泉として生まれ変わる為、創業5年目にしてまだ綺麗な建物が解体されることになったのです。

新生、大和の湯はどのように大変貌をとげていくか?

人生色々、会社も色々、同様に風呂の入り方にも色々あります。温泉の治癒効果を求めて来る人、様々なスタイルの風呂に入るのを楽しみにしている人、サウナでテレビを見たがる人、家族と皆で風呂に入ることを楽しみにしている人、マッサージで寛ぎたい人、風呂上りに景色を見ながらグーッと一杯飲むことを生き甲斐としている人など、多種多様の楽しみ方があります。そこで羽深氏はこれらの複数のニーズに応えるべく、印旛沼を一望できる露天風呂を始めとし、露天樽風呂やジェット風呂、大型サウナや高齢者向けのラディアント・バス等、誰もが楽しめる複数の風呂を用意するだけでなく、最高の景観を実現するために建物を3階建にして高さを確保しました。

更に食堂施設においては、印旛沼と富士山を一望しながら飲食することのできる本格的な寿司バーと和食カウンターを用意し、それ以外にも真下を水が流れる半個室ダイニングや、各種プライベートルーム等、大変バラエティーに富んだ設計を凝らしています。極めつけは露天風呂付個室ダイニングルームです。この個室空間ではゆったりと楽しみながら食事をし、印旛沼を一望しながら露天風呂に入り、自分だけの時間を満喫することができます。またマッサージ・サロンも最近のトレンドに合わせた高級感漂うデザインを取り入れ、個室で自分の好きなCDを選んで聞きながら、プライベートな雰囲気を大切にした空間で、施術を楽しむことができるように配慮されています。

成田市の観光事業の今後を占う国内屈指のデザイナーズ日帰り温泉

平成17年3月、成田市に国内屈指のデザイナーズ日帰り温泉が登場します。羽深氏の最新作として、新鮮な和風モダンの仕掛けがふんだんに盛り込まれている新生、デザイナーズ温泉「大和の湯」は、訪れる人、誰もにその人の記憶から拭い去ることができない強烈な印象を与えることでしょう。たった1つのデザイナーズ日帰り温泉のプロジェクトではありますが、こんな一民間企業の事業プランからでも新しい町づくりを始めることができます。そしてそれが何時の日か、北総地域における新しいリゾート産業に結びついていくのです。この温泉事業をきっかけに新たなる社会インフラが構築され、周辺道路が整備され、ビジネスチャンスが地域一帯に到来し、必然的に雇用が促進され、最終的に皆が豊かになっていくのではないでしょうか。だからこそ、声を大にして叫びたい。温泉大国日本に成田ありきと。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部