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アンチエイジングの旅 Part.II
ホルモン補充療法が多くの人を虜にしてしまう訳

アンチエイジング治療の基本は、何と言っても「ライフスタイルの改革」につきます。平たく言えば、不摂生な生活習慣を絶ち、ごく当たり前の健康的な生活を送るということです。昔からの格言である早寝、早起きという規則正しい生活は勿論のこと、栄養価が高く、カロリーの低い食生活を心がけながら腹八分の教えを守り、尚且つ適度な運動を定期的に実行することを目指します。つまり暴飲暴食や、夜更かしを避け、人体に害を及ぼす煙草などは勿論、過度なストレスの要因を取り除き、老化の原因となる行動を慎むことが、アンチエイジングの大原則なのです。

実はこの生活パターンの改革が大変難しく、長年、身についた様々な悪習慣を簡単に変えることができないため、結果として加齢を促進させてしまう人が大勢います。その上、意思の弱さも手伝ってか、日々数分の運動さえもまともに継続できないという問題に直面することは決して珍しくありません。例えば、甘いものを食べると血糖値が上昇し、その結果、インスリンの分泌が過剰となって内因性成長ホルモンの分泌が妨げられるため、抗加齢医学では糖分やでんぷん質を多く含む食品の摂取を減らすことを教えています。また、肥満体質も成長ホルモンの放出を妨げるので、適正体重まで減量することが必須です。ところが、甘いデザートを毎日美味しく食べてきた人が、いざ、それを止めようと心がけても、そう容易く食生活を変えることはできないのです。また毎日ビールの大瓶を1本飲んでいる人がメタボを解消するために、小瓶1本だけに制限するのは、至難の業かも知れませんし、これまで運動をしていなかった人が、毎日ちょっとだけストレッチをしようと決めても、体が言うことを利かずにすぐにやめてしまうのも無理はありません。このような理由が重なり、現実的にアンチエイジングの基本ルールを遵守することは、多くの庶民にとって極めて難しく、あきらめてしまう人が大勢いるようです。若返りを実現する為には、何としてでも若くなりたいという強い意志と、それに伴う実行力が必要です。

アンチエイジング治療には覚悟が必要!

当時45歳であった筆者は、ある日、主治医の薦めによって老化度のチェックを受けることになりました。すると確かに歳相応に、テストステロンと呼ばれる男性ホルモン値や、DHEA値が大きく減少しており、またソマトメジンCとも呼ばれるIGF-I値も、適正最低数値の半分以下になっていました。年相応以上に、ホルモンの分泌が大幅に落ち込んでいたのです。これらのホルモン値は、周囲の環境やストレスレベルによっては急降下することがあり、正に自分がその近代社会のストレス、不摂生の餌食になっていたのです。その結果を踏まえて、筆者はアンチエイジング療法の治療に臨むことにしました。若くありたいという気持ちは強く持っていたので、とにかく何でも言われるままにやってみたかったのです。しかしながら、アンチエイジングの治療費は想像していた以上に高価であり、決して生半可な気持ちでは受けることができないものでした。それ故、やるからには絶対に結果を出す、という覚悟をもって、治療に臨みました。

まず、毎日水をたくさん飲むことから始め、サプリメントを毎食後欠かさず摂取し、甘いものや脂っこい食べ物をできるだけ排除し、運動量を増やす努力をするという日課が始まりました。と同時に、低下ぎみであったホルモンのレベルを是正する為に、ホルモン補充療法が開始されました。するとどうでしょう。アンチエイジングの治療を開始してから1ヶ月も経たない内に、みるみると体が変化を覚え始め、それからというもの、日々、元気が増し加わり、2ヶ月もすると自分でも信じられない程、若き日の自分を再現したようなエネルギーに満ち溢れてきたのです。体に馬力が充満したようなすがすがしい気分は、正に爽快としか言いようがありませんでした。そして多少肥満気味であった体重も徐々に減り始め、それまで苦にしていた階段の上り下りが、疲れを感じることさえ無くなってきました。体が自然と運動を欲するようになってきたのです。また、毎週練習していたテニスも、それまでは怪我に悩まされることが多く、体中筋肉を痛めていたのが、いつの間にか、怪我をしなくなってきました。つまりアンチエイジングの効果で、体全体の動きが機敏になり、柔軟性が増し、運動量を増やしたこともあり、筋力がついてきたのです。おまけに精力も10代の頃を髣髴させる程の気分です。このアンチエイジング効果の延長線に、筆者のマラソンレース参戦があり、それから4年間で13回もの国際マラソン大会を走り続け、2007年11月に開催された成田POPランでは成田市民ハーフの部で準優勝をするまでに至ったのです。これこそ正に、「想定外」のアンチエイジングの効果です。

ホルモン療法の真髄とは何か?

アンチエイジング療法は生活習慣の改善が基本ですが、その治療の骨子はホルモン療法です。人は誰しも歳をとると共に、若さを保つ為に不可欠なホルモンの分泌が減り始め、その結果、筋力や視覚能力、精力等が低下します。その不足しているホルモンを補充して、各種ホルモンのバランスを最適なレベルで維持することが、アンチエイジングの重要な課題です。それ故、医学的常識に基づく健康管理法をベースに、ライフスタイルを徹底して改善する努力をするだけでなく、同時に抗加齢医学の王道とも言えるホルモン補充療法を施すことが、確実に若返りを実現するための条件となります。このホルモン療法があってこそ、オプティマル・ヘルスとも呼ばれる、歳相応のベストコンディションが現実のものとなります。

ホルモン療法については学説が分かれ、一概に医療方法を確定することはできません。しかし一説によりますと、およそ人間は30歳前後が各種ホルモンバランスの調和が最も良くとれていると考えられています。それ故、典型的なアンチエイジング療法では、30歳における各種ホルモンのレベルを長年持続させることを指標とし、それに向けて補充療法を行うことにより、いつまでもその30歳のホルモンレベルを維持することを目指します。つまり、外見は歳相応に老けてきても、体の内面においては常に30台のホルモンバランスを誇り、活き活きと輝くオプティマル・ヘルスを実現するというのがミソなのです。アンチエイジングの治療に頻繁に使われるホルモン剤は主に、DHEA、メラトニン、成長ホルモン(HGH)、HCGの4種類です。最初の2つは錠剤で投与され、後者は注射を使用します。DHEAは副腎から分泌されるホルモンであり、免疫力の上昇、及びストレスに対して抵抗力をつける働きがあり、このホルモンをベースに性ホルモンや副腎皮質ホルモン等、様々なホルモンが作られるため重要です。メラトニンは睡眠の周期を整える働きがあり、睡眠そのものの質を高め、体により良い休息を与えます。また、抗酸化作用や免疫力を高めることでも知られ、老化を防ぐためにも必要不可欠なホルモンです。そして、ここ最近話題の成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、IGF-Iとの相互作用により人体内の組織、器官の成長に貢献するため、最も重要なホルモンの一つと言われています。例えば骨を強くし、筋力を増強し、性的な能力を高め、免疫力を強化する働きがあるだけでなく、視力を改善し、気分を良くし、記憶力さえも向上させます。つまり運動能力を向上させる働きがあります。最後はHCGと呼ばれる性腺刺激ホルモンであり、これは女性の卵子の成長と排卵を助け、男性では精子数を増加させる働きがあり、最強の精力剤とも言えます。これらのホルモンはいずれも20歳前後をピークにして減少し始めるため、それを補充することにより、ホルモンレベルがV字型に回復します。その結果、「若き日の自分を再現した」という位の元気を取り戻すのがアンチエイジングの狙いです。

ホルモン治療はドーピング?

アンチエイジング療法の骨子とも言えるホルモン補充療法が、あまり公に語られないのには訳があります。実は、このアンチエイジング療法に使われているホルモン剤の中心であるヒト成長ホルモン(HGH)こそ、スポーツ選手がドーピングで罰せられる禁止薬物の一つなのです。ところが人成長ホルモンは、スポーツ選手に限らず、実際には多くの医者、著名人、政治家らが日々、欠かさずに愛用する「お薬」として世界各地で既に広く普及しています。その結果、ヒト成長ホルモン剤は今や、世界各地で引っ張りだこなのです。つまりホルモン補充療法とは、正にドーピングと瓜二つの関係にある訳です。スポーツ選手にとっては、ドーピングはルール違反であり、その規則も年々厳しくなっているため、当然のことながら使用を控えなければいけません。ところが、一般社会においては医者を筆頭として、大勢の裕福な知識階級が、日々、ホルモン剤を自ら注射してその恩恵を受けている為、その実態をベールに覆い隠さなければなりません。その結果、時折ドーピング問題が世間で話題に上ることはありますが、決してそれが大きな社会問題となることはありません。何故なら、このホルモン療法こそ、医師が自ら認める最先端の医学療法だからです。つまるところ、巷ではドーピングと批判されている行為そのものが、実は大勢の医師達が自らに施している最先端のホルモン療法なのです。

日本はホルモン治療の後進国です。米国と比較してもその利用度、理解度は著しく劣るため、ホルモン補充療法はグレーゾーンとして扱うしか、今は術がありません。しかしながら、アンチエイジング療法の骨子として、世界中の医学会で認知されつつあるホルモン補充療法から、このまま日本が取り残されて良いのでしょうか?確かにホルモン補充療法は薬物摂取そのものであり、現状では高価な買い物です。しかしその反面、必ず結果が出る強力な処方箋でもあり、そのまま放置すれば老いていく身体に、信じられない程の若さと活力を与えてくれます。もう数年もすると、 ホルモン療法を受けている人と、そうでない人の違いが、同い年でも歴然として現れてくるかもしれません。自然のままに老化する人間と、ホルモン補充療法を施して、若返りを体験した人間の相違です。どちらの選択が人類にとって最終的に良かったかは、いつか歴史が教えてくれることになるでしょう。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部