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アンチエイジングの旅 最終編
自然に老いることを前向きに受け止めることがアンチエイジングの真髄!

2007年、アンチエイジングがブレークしました。「若さと美貌」を看板に掲げているだけに、新聞、雑誌やテレビも含め、各種メディアの注目度は高く、アンチエイジングのブームは一過性のものではなさそうです。筆者にとっても2007年は、アンチエイジングの必要性を真剣に考え始めた元年でした。それ以前に抗加齢の治療を受けたことはありますが、当初は少しでも以前の元気を取り戻すことができればという単なる興味本位な動機がきっかけでした。ところが年月が経ち、50歳という年齢を境に、それまで体験したことのない老化現象が現れ始め、日増しに老いていく体の変化と共に、アンチエイジングの必要性について再考する良い機会を得られました。

避けることのできぬ老化現象

ショッキングなことに昨年、目の前の文字がぼやけて見えないという一大事に遭遇しました。原因は歳と共にレンズの役割を担う水晶体が硬化してしまい、ピントを合わせる機能が低下してしまう老眼です。これまでずっと、両眼共に1.5という視力を誇っていただけに、近くのものが見えなくなる老眼には大層困り果てました。レストランに行けばメニューが読めず、ドアに付いているテンキーさえもぼやけて見えず、8と3の見分けがつかなくなったのです。またある日、自分の後ろ姿を鏡で見ると、後頭部の地肌がテカテカと光っていることに気が付きました。「いつの間にか毛が抜け始めている!」そんな危機感にかられ、育毛にも本腰をいれて取り組むようになりました。

頭髪に対してそれまで何も気にかけなかったことを反省し、スキャルプケアに毎日、数分の時間をかけるようにしました。すると、それまでの抜け毛は見るからに細く、貧弱であったのに、ケア後は、抜け毛が単に少なくなっただけでなく、短く、太くなってきたのです。体はいたわり、ケアをすべきものなのだと、つくづく感じさせられました。

体そのものに関しては、マラソンへ本格的に取り組み、筋力トレーニングを定期的に行っていたこともあり、筋肉が以前とは見違えるように鍛えられていました。また、久々に腹筋が割れて見えてきたことも嬉しかったのですが、顔のシワだけは増え続けていくことを避けられませんでした。特に額のシワは、そこに刻まれていく線が日増しに長く、深くなり、とても気になりました。いくらマッサージをしようが、顔を洗顔しようが、一向に改善できません。

更に気になることに、ここ最近、精力の衰えを一気に感じ始めたのです。また幼い頃、銭湯に通いながら、何でおじいちゃんの大事な袋は、だらんと垂れ下がっているのか不思議に思ったものでしたが、ふと気がつくといつの間にか、自分の大事な部分も垂れ下がっているではないですか。しかも陰茎の形そのものまでが変形し始めたのです。

最先端のアンチエイジングの知恵を駆使しても、これらの老化現象には勝ち目がないでしょう。食い止めることができない老化現象に対しては、必死にアンチエイジングの処方を投じ、無駄な抵抗を繰り返して悩むよりも、どうせ老いていく体なら、あっさりと割り切ってその現実を受け入れ、むしろ老いていくと共に豊かになる心を喜び、人生を感謝の気持ちを持ってしんだ方が良いように思えてきました。

アンチエイジングで寿命が縮まる?

アンチエイジングがここまで話題となる根底には、どうやら若さと美貌に対するコンプレックスが現代社会にあり、それをマスメディアが更に煽り立てているように思えてなりません。真の健康体を求めて生活習慣を改善することが大事であるにも関わらず、昨今の美容整形のように、ひたすら見かけの美しさだけを追い求めることは問題です。自然に老いていくことの美しさに気がつかず、ひたすら若さと美貌を追い求める余り、その不満が却って精神的な負担とならないか心配です。アンチエイジングの理想は高いため、それを気にする余り、いつの間にか越えることのできないハードルを掲げてしまい、多くの人にストレスを与えてしまうのです。その結果、長寿を目指すはずのアンチエイジングが、いつの間にかアンチ・アンチエイジングとなり、寿命を短縮してしまうような気がしてなりません。

「正常な老化は仕方ないと受け止めることも大事」であるとアンチエイジングは教えていますが、果たして正常な老化現象は「仕方ない」と諦めることでしょうか?アンチエイジングの権威でもある米井先生によると、抗加齢医学とは、「健康な人のさらなる健康を指導する医療」であり、老化を「予防・治療可能な病気」と捉えることにより、生活態度を総合的に見直し、老化を進行させる活性酸素を減らすことにスポットを当てています。その根底にはいつまでも若くあり、老いたくないという気持ちの表れがあります。ところが現実問題として、老化のスピードを遅くさせることはできても、人間は誰しも老いていくことに変わりありません。人間は生き物であり、日々、老いていくのが当たり前なのですから、むしろその現実を前向きに受け止め、心豊かに老いることの素晴らしさを体験すべきではないでしょうか。

老いていくことの楽しみと美しさを知る!

オーストラリアのシドニーという美しい港町の郊外に、会社の役員を務めながら人生をフルにエンジョイしている60代の夫婦がいます。親しい知人でもあり、時折、仕事がてら彼らの家を訪ねることがあります。そこはシドニーから車で1時間程離れた所にあり、湖を見下ろすことのできる小さな一軒家です。既に子供達も結婚して家を離れ、静かなたたずまいで2人だけの生活を送っていますが、天気の良い日は決まって、森に面しているバルコニーでゆっくりと夕食を楽しむことにしているそうです。そして彼らが食事をする時には、森からオウムやリス等の動物達が毎晩訪れ、動物に囲まれながら食事を楽しんでいるのです。

彼らの結婚生活について、夫の口癖は決まっています。Every year is better than the last! 「毎年、前の年よりもっと素晴らい!」。そして妻はそれに応えるかのごとく、He is finally the man I want him to be!「夫は自分が望んでいた通りの人よ!」と語ります。それ程2人の絆は強く、仲が良いのです。羨ましい限りですが、彼らの幸せの秘訣は、お互いの心のつながりに重きをおき、自然と動物を愛し、今、与えられている自分の環境で満足していることです。人間を幸せにする一番の秘訣は心であり、まず心の中が満たされていなければ、いくら表面をつくろっても幸福感を味わうことはできません。そして人間関係と自然を大事にするからこそ、年をとると共に、人生の楽しみが倍増していくような醍醐味に恵まれるのではないでしょうか。

アンチエイジングにも、まず、そのような心持ちを大切にすることを取り入れなければ、様々な努力が台無しになってしまいます。例えば、せっかくの休日、大自然に囲まれた天然温泉に行く機会があれば、山々を散歩し、自然の空気を思いっきり吸い、その後、温泉につかりながらくつろぐのが、今も昔も変わらない健康方法でしょう。ところが自然の恩恵には目もくれず、日中から人工のスパでフェイシャルやマッサージ等の施術に時間を費やしてばかりいては、大切なものを見失ってしまうことにもなりかねません。行き着くところ、アンチエイジングが本来の目的を達成する為には、心の豊かさを大切にする精神論が不可欠ではないでしょうか。

抗加齢は心の治癒から始まる!

アンチエイジングは、老化するスピードを最小限に抑えながら、心豊かに人生を楽しむ秘訣を教えています。それをオプティマル・ヘルスと言い、それはまず、ありのままの自分を見つめ、今の自分を受け入れ、今日という日を感謝して楽しむことから始まります。だからこそ、単なる見かけにこだわる余り、多額の費用をつぎこみ、不安な気持ちで様々な治療を受けるよりも、食生活に気をつけながら美味しいものを感謝して食べ、適度な運動を楽しみ、心地よい音楽に酔いしれ、睡眠を十分にとることが大事です。それだけでアンチエイジングの教えの殆どが達成できることを経験則から学びました。これらの殆どはお金のかかることではなく、単に本人の強い決意と努力が必要なだけです。自分の人生を縮めるのも、延命させるのも、全て自分の生活習慣にかかっているということです。

その上で、もし自分の心に時間とゆとりがあり、経済的にも恵まれていれば、様々な美容療法の成果を楽しむことができるでしょう。但し、元から何らかの肉体コンプレックスを持っているならば、まずその悩みから開放されるための癒しが必要なことに留意する必要があります。そして無理な目標を立てることがないようにしなければなりません。どんな治療を受けたとしても、いずれ身体はまた老いていくからです。またホルモン治療の成果についても、もっとオープンに意見交換がなされるべきです。その為には、既に治療を受けたことのある大勢の医者達が、まず自らの体験を公表し、医学的にそれらのデータを分析する必要があります。大勢の運動選手だけがドーピングで捕まり、その事実を公表する時代はもう終焉を迎えなければなりません。運動選手の薬物疑惑など、氷山の一角にすぎないからです。

アンチエイジングの基本はシンプルです。それは人間が元気に長寿を達成する為の健康管理方法であり、その為の生活習慣の改革を教えています。そして、今、できることから少しずつ始め、日々、人生を健康的に楽しむ方法を学んでいくことが大切です。また、アンチエイジングの実践に伴い、元来の目的である長寿を実現する為には、正しい精神論が不可欠です。行き着くところ、肉体的には健康に生き長らえることを目指し、同時に精神面においても成長し、肉体が老いるにつれて、より一層心が豊かになり、生きていることの素晴らしさを喜ぶという、双方の掛け合わせが大切です。老いていくことの必然性をポジティブに受け止めながらも、肉体の老化が最小限に食止められ、日々健康で、笑顔をもって楽しめる理想のライフスタイルが、筆者が学んだアンチエイジングの真髄です。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部