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佐倉健康マラソンで元気一杯 !
無理をしないで楽しく走ることが健康マラソンの秘訣 !

ほふられる子羊が屠場で運命の時を待つ。何故かしらそれが、マラソンのスタートラインで、号砲を待つ選手の有様を象徴しているように思えてなりません。それ程、競技マラソンには苦しみが伴い、余程の覚悟が無い限り、そう簡単に挑戦できるものではありません。特に、ここ最近の女子マラソン大会では、レース中に失速し、なお走り続ける選手の姿が全国ネットで幾度となく放映され、感動の余り涙した方も少なくないはずです。

マラソンドラマに感動する日本国民

昨年8月の世界陸上では、土佐礼子選手が終盤の見事な追い上げで、銅メダルとオリンピックへの切符を手にしました。苦しみに堪えながら、歯を食いしばって走っている姿は、大勢の視聴者と沿道の観衆に感動と勇気を与えてくれました。しかしながら、無残にも失速して脱落していく選手の姿も目に付きます。筆者も言葉では言い表すことのできないほどのつらい失速を3度体験したことがあり、失速する選手を見る度に、決して他人ごととは思えず自然と涙してしまいます。

東京国際女子ではトップを走る野口みずき選手に併走していた渋井陽子選手が29㎞で失速し、心身共に消耗して惨敗しました。また大阪国際女子マラソンでは、1万mで無敵の女王とも言われていた福士加代子選手が、スタートから堂々とトップを快走していたにもかかわらず、30㎞過ぎで大失速し、最後は放心状態となってゴール直前で2度も倒れてしまったのです。多くの観衆が、過酷なマラソンドラマの壮絶な最後に絶句したことでしょう。

競技マラソンは体に悪い?

完全燃焼を目指して、自分の持てる限りの力を振り絞り、長時間走り続けるのが競技マラソン選手の宿命です。でもこのような体の酷使は、健康に良いはずがありません。オーバーヒートして走り続ければ車のエンジンも焼かれて壊れるのと同様に、人間も自分の体を無理強いすれば、健康を害します。何しろマラソンレースでは、十分に水分や栄養を補給することがないまま、脳神経からは「体のダメージを避ける為にもう走るな ! 」という赤信号が出ても、それを無視してひたすら走り続ける訳ですから、体が壊れて当たり前です。

筆者もこのようなつらいマラソンレースをこれまで13回体験してきましたが、ここ最近アンチエイジングを勉強していることもあり、無理をしすぎるマラソンレースが決して自分の体に良くないことがわかってきました。体の酷使、そして極度の疲労は細胞の酸化をもたらし、老化現象が急速に進むだけでなく、水分の不足から血管に多大なストレスがかかり、血管年齢を押し上げることになります。つまり無理して走り続けることにより、下手すると自分の寿命を縮めることになりかねないのです !

健康の為に再び、走り始める !

例え競技マラソンが体に悪いとしても、走ることの大切さは否定できません。健康管理上、適度な運動は必須であり、高齢になっても心地良く走り続けることができたら、どんなに素晴らしいでしょうか。日々走り、ストレッチを繰り返すことは、筆者にとっても健康の秘訣です。実際、マラソンレースを止め、走る距離が減ったとたん、体調を崩しやすくなったのです。そして腰痛が生じたり、首や肩のこりが以前にも増してひどくなってしまいました。おまけに体重も増え始め、余分な脂肪がわき腹につき、気持ちが悪くて仕方がありません。

ミニマラソンなら楽しめるのか?

適度に走り続けることはもはや健康維持の為に不可欠と思い、距離の短いハーフマラソンを走ってみることにしました。昨年11月、成田市で開催された成田POPランの出場は2回目でしたが、ベルリンではハーフを1時間28分台で走った実績があるので、どんなに悪くても同等の28分台で走れるだろうと目論見ました。ところが大会の当日は気温が上昇し、最初の5㎞を18分台と飛ばしすぎたこともあって後半失速し、「もう走りたくない…」と心の中で問答しながら走り続けなければならない大変つらい1時間半のレースとなってしまったのです。結果は成田市民50歳以上の部門で準優勝でしたが、記録も1時間30分と冴えません。嫌々ながら走るなら、ハーフマラソンも非健康的であると言わざるを得ません。

ならば、更に距離の短い5㎞マラソンならば、ずっと楽に走れるだろうと、2月に東京で開催された目白ロードレースに参戦してみました。目標はとりあえず、楽しく走って入賞することです。学習院大学の構内にある階段を登りながら目白界隈を3週回って走るコースであり、自らの目標タイムを19分台に設定しました。ところが、長い昇り階段を俊足で駆け上ったとたんに疲れきってしまって再度失速し、達成できるはずの記録は遠のき、結局11位という最悪の結果です。自分の無力を思い知らされました。

そこでハードルを更に低くし、もっと参加者の少ない大会で、今度こそは入賞しようと、3月23日、東京八王子で開催された武蔵陵10㎞マラソンに参加しました。ところが当日は花粉がひどく、いざ走り始めると、鼻水はでるは、咳き込むは、とにかく走るだけが精一杯という大苦戦です。しかも以前ならば、ここ一番勝負 ! というつらい場面にくると、「よっしゃ ! 」、「まだまだ ! 」と自らを叱咤激励して自分を奮い立たせていたのに、やたら「つらすぎる…」、「こりゃ、体に悪いよ…」と、誘惑じみた思いだけが頭の中を駆け巡るのです。結果として、河川沿いを走るだけのコースで40分を切ることもできず、それでも参加者が少ないこともあって3位に入賞したのがせめてもの慰めでした。

そんな矢先、佐倉市で健康マラソンなるものが開催されることをネットで発見し、早速申し込むことにしました。いきつくところ、短距離も長距離も辛さは一緒です。だからこそ、どうせ走るなら時間との戦いではなく、「健康のために走る」という自分に優しい走りに徹しようと、フルマラソン大会に復帰宣言です。マラソンを止めようと決めてから半年しか経っていない中、ふと気がつくと、佐倉朝日健康マラソンのスタートラインに立っている自分がいました。

佐倉のコースで花見ラン !

3月30日、大会の当日、気温は10度、天気は曇りという絶好のコンディションです。大会の参加者は総数で5000人を超え、佐倉市内の岩名運動公園から田んぼ、県道、印旛沼沿いを走る著名なコースでは、桜が開花する季節と重なる3月下旬、桜の花を眺めながら散歩道を走る醍醐味を味わうことができます。

さほど練習もせず、体重もややオーバー気味であることも考慮し、とにかく無理をせず、まず楽しく走ることを自分に約束。そして走りながら機会がある度に、沿道で応援してくれる子供達と手を合わせたり、また途中で足が止まっている走者がいたら、激励の言葉をかけようと心に決めました。

9時30分、マラソンがスタートし、久々のレースにワクワク感がつのります。まずおかしかったことは、スタート直後にFINISHの垂れ幕が目に入り、「あ、ここで終了」となれば、どんなにかラッキー ! と苦笑してしまったことです。そして走りだして間もなく、40㎞地点の標識が見えてきたのです。走り始めたばかりなのに、何と誘惑の多いコースなのでしょう。その直後、既にもう息遣いの荒いランナーが真横を走っていたので声をかけてみると、歳は35、ニコチンのとりすぎで、毎回ハーフを超えないとゼーゼーがとれないということ。ならばタバコを止めればいいのにと、複雑な気持ちになってしまいました。

暫くすると、赤いアフロのかつらを被り、綺麗なフォームで走っている中年のランナーを見つけ、マークしていると、11km地点で突然かつらをはいで、リタイアです。一緒に立ち止まり、「がんばろう ! 」と大声をかけると、「もう足が痛くて走れない」、と嘆いていました。さらば、45歳のランナーよ !

更に15km地点では、見るからに経験豊富な実年ランナーを発見。話しかけてみると、呼吸も安定したまま、「大昔、サブスリーを2度、達成したことがあるんだ」と誇らしげに語ってくれました。さすが、30年以上走っているベテランのランナーです。

このコースの最大の欠点は、5㎞ごとに計測器がないどころか、ハーフでも時計表示が無いことです。今回は時間を気にせず楽しく走るということを心に決めていましたので、腕時計もつけていません。タイム表示がないマラソンコースは、今まで遭遇したことがなく、自分がどの位のスピードで走っているのか、皆目検討がつかなくなってしまいました。でも「そんなの関係ない ! 」と、心の中で叫びつつ走り続けるのがまた、「いい感じ」です。

32km地点を過ぎると、普通ならここから大変な試練が始まるものの、今回はこれまで力を抜いて走っているので余力が十分です。そこで最後の10kmは自分の走りをすることに決め、5m先の地面をひたすら見つめながら、「足を前に、真中に出す」と心の中で言い続けながら走ることに専念です。足は疲れてきていますが、それでもフォームは崩れず、無理なく勢いがついてきました。そして前半、大勢のランナーに抜かれてしまった分、ここからは一挙に挽回です。35km地点を超えると、走るのをあきらめて足を止めるランナーが続出しているのが目につき、一人一人に「がんばれ、ゴールはもう少しだ ! 」と、檄を飛ばして声をかけると、何人かは反応があり、すぐにまた走り始めました。やっぱり応援は大事です !

残り500mになると競技場が目に入り、ここからはダッシュ ! 最後は100m程の昇り坂を駆け上って競技場に入り、両手を上げて笑顔でゴール ! これ程までにレース後半、楽しんで走った記憶はなく、ゴールを切った時点でも、まだまだ走れる余力が残っていたのが不思議な位でした。記録は3時間13分。こういう楽しい走り方、語りあいながら走るマラソン大会なら、また走ってみたくなりそうです。マラソンには大変な試練がつきものです。しかし、健康的に楽しく走るマラソンレースもあるのだ、ということを証明することが出来たと同時に、走り続ける勇気と信念を佐倉から頂いてきました。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部