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第15回 自分の健康は自分で守る

晩秋から冬になると、寒氣と共に、日本列島の太平洋側は空氣がひどく乾燥します。生物の多くは、一定の温かさと、水や湿り氣の中で元気に過ごしています。ところが寒氣こそ活発になる生物、いや病原体があります。流行性感冒を引き起す病原体、それはインフルエンザヴィルスです。感冒は風邪とも言われます。風邪は五臓の一つである肺を冒します。

東洋医学で蔵象という言葉をよく耳にします。「蔵象」とは臓腑に対する、生理及び病理学を指すと考えられます。

肺の蔵象を調べてみると、肺は「氣ヲ主ル」、「皮毛ニ合ス」、「鼻ニ通ズ」、「大腸ト表裏ト為ス」と中国の古医書に記されています。これを分かり易く、現代日本語にしてみましょう。

"氣ヲ主ル"とは呼吸のこと。大氣中の酸素(清氣)を体内に取り入れ、体内で発生した二酸化炭素(炭酸ガス-濁氣)を体外に排泄します。"皮毛ニ合ス"とは、肺と皮膚とが緊密な関係を持っているということ。前回で記した通り、外邪である風邪などは人体の最も表面の皮膚から侵入します。人体が強靭であれば、外邪を決して受け入れません。感染しても発病はしないで済みます。現在でいう免疫作用に当るでしょうか。"鼻ニ通ズ"とは、肺に迎え入れ、あるいは送り出す空氣は鼻の竅があったればこそ、ということです。"大腸ト表裏ト為ス"とはどういうことでしょうか。肺は臓(中身が詰まった臓器)にして最も上に位置し、大腸は腑(中が空洞の臓器)にして最下位に在ります。陰陽とか表裏というときは、相互に対立しながらも同時に依存し合わなければその存在価値がない、という関係を中国哲学では説いているのです。

古人の智恵には感服します。外邪は皮膚から体内に侵入すると考え、皮膚を鍛える、つまり寒氣の中で乾布摩擦をして皮膚を頑丈にすれば、病邪になるかも知れない外邪を撥ね返すことになります。

東洋医学では、感染→発病にならない養生が「最も重要」であると、最古の医学書の第一篇の巻頭に記されています。インフルエンザに罹らないためには、睡眠・栄養・過労にならないよう留意し、外界の氣象に従い、衣服を合せることが肝腎ですね。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
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