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第16回 自分の健康は自分で守る

前回に続いて蔵象学について記します。蔵象とは現代医学でいう六臓六腑の生理・病理学と理解して頂ければよいでしょう。「肺ト大腸ハ表裏ト為ス」にもう少し詳しく考察を加えてみましょう。

もとより今日、東洋医学の狭義の考え方は古い中国・漢代に完成をみた医学を指します。漢方医学といわれるのもそれ故です。今から約二千年前に遡ることになります。従ってここで解釈することは、二千年前の中国古文であることをご承知おき願います。

東洋医学の理論構築は、陰陽論や五行説を通して語られます。現代教育の中では学習する機会がなく、馴染まないかも知れません。事に当たった折々に、解説を加えることと致しましょう。

では、先の肺と大腸との係わりに戻ります。肺は天の氣、すなわち太陽の光を皮膚を通して浴び(前号で「肺ハ皮毛ニ通ズ」)、大氣を鼻から肺に運び、呼吸を反復します。大腸は地の氣、飲食物を口から入れ、腹部にある胃に納めます。消化された食物は小腸で栄養を吸収され、その粕を大腸に送り、肛門から排泄します。天の氣は軽く、形が見えません。地の氣は姿が見えて重く、下に降ります。軽いものは陽、重いものは陰と説かれます。吸氣は鼻腔→氣管→氣管支→肺胞へと進入します。一方飲食物は口→口腔→咽頭→食道(頚部食道→胸部食道→腹部食道)→胃へと送られます。

私達人間は動物です。動物は動くことが出来ないと生存は不可能です。動くためには筋肉・骨など運動器がなくてはなりません。呼吸器にしても消化器にしても、管を伝って物質が運ばれます。つまり氣管も食管も筋肉で構成され、管の内壁には粘膜があり、粘液を分泌しています。氣道の粘膜は大氣中の塵埃を除き、湿氣を与え、温度を調節したりして身体の保全を図っています。他方食管も口腔で味・硬さ・匂い・温度などを通じて安全な飲食物かを確認し嚥下します。

今、鳥インフルエンザ・ウィルスの拡張が深刻な問題になっています。このウィルスは鳥から鳥ヘ感染するものですが、突然変異で強力な病原体となり、人間に感染→発病に至ると死者が多数出ると推測されています。氣道と食道は咽喉で繋がっています。粘膜は皮膚の一部ですので、インフルエンザに罹患すると食欲不振、腹部膨満、下痢などを発症します。鼻、大腸アレルギー、氣管支喘息、皮膚アレルギーと見渡すと、先人の将に「肺ト大腸ハ表裏ト為ス」という先見の明に驚かされます。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
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