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第17回 自分の健康は自分で守る

東洋医学では「風」という文字の表わす意味には幾つもの趣きがあって面白いものです。

風を漢和辞典で調べてみると、「かぜ-ゆれ動く空氣の流れ」という説明文を見ることができます。地球の公転と自転の変化の中で、空氣の流れも変化を来すことは周知の通りです。が、この風の派生義を尋ねると、多様な用例に突き当ります。「慣習-ならわし・風習・風俗」、「おもむき・風雅・風流・風情・英国風」、「なりふり・風貌・風采」、「自然のけしき・風光・風景」、「なびかせること・風教・風靡」、「かぜのように、それと伝わること・うわさ・風聞・風評」、「風刺・風喩、わずらう・風邪・中風」、さらには風土、風潮、風格、風雅と、枚挙に暇がない程です。

少し回り路をしましたが、風の熟語が派生義を通して多方位に豊かに使われていることを先ず知って欲しかったのです。そしてもう一つ重要な事柄を紹介したいと思います。

西周時代から戦国時代に書き継がれたといわれる歴史書『書経』の中に「馬牛其風-馬牛ソレ風ス」。という文が見られます。また『左伝』に「風馬牛不相及-風スル馬牛ハ相ヒ及バズ」との記載があります。ここで言う「風」とは「発情する、さかりがつく」という意味です。

風という字は「大鳥の姿」を表わし、鳳と同じ原字だといわれています。鳳は「大鳥が羽ばたいてゆれ動くさま」を示しており、中国では鳳は風の使いと考えられています。のちに凡+虫から風という文字が作字されました。凡は広く張った帆の象形。凧も同じ作字法から生まれたといっていいでしょう。


虫は"むし"と読み、毛虫や青虫のようなむしを現在は表わしていますが、造字された古代中国では動物全般を指していました。二十四節の一つに「啓蟄」がありますね。春を感じて冬ごもりをしていた生き物が目覚めて這い出すことです。牛馬もまた春を感じて繁殖の期を迎えるのです。

このように生物は風の恩恵を受けて、種の増殖と保存という営みが永々と衛営されているのです。植物は風の作用に与って受粉を行ない、動物もまた風の便りで盛りを迎える。性フェロモンを運ぶには、実に空氣の移動-風が介在していることが分かります。風は単に空氣の移動・流れだけではなく、生物を育む力を有しているのです。むべなるかな、むべなるかな。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
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