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第18回 自分の健康は自分で守る

「人間は、自然のうちでもっとも弱い一本の葦のようなものにすぎない。だが、それは考える葦である」とは、「考える」という人間の特性の偉大さを説いたものです。これを説いた人はパスカル…フランスの数学・物理・哲学者です。

人間は暮らしの中で考え、知恵を絞り、より好い生活を送りながら、そのための工夫や想像に努力して来ました。

中国医学のうちの灸療法も、工夫や想像について特筆するに値する一つといえましょう。灸療法については、多くの人に知られていると思いますが、少し考察を加えておきましょう。

灸というのは、体表の一定の部位に、“もぐさ”の燃焼による温熱的刺激を、直接または間接的に与えて、一定の生体反応を起こさせ、本来体自体が持っている自然治癒力を活かし、疾病の治癒または予防を行うことを目的とした伝統医術のことです。

灸療法による“もぐさ”は蓬(よもぎ)の葉からつくられます。六月の頃、蓬の葉を摘み取り、夏の暑いときに天日にさらして十分に乾燥させ、冬の乾氣を利用して石臼でひいてこまかくし、ふるいにかけて、葉脈を去り、残った綿のような繊維を集めたもの。これが“もぐさ”です。

さて、灸治のことは、地方によっては「やいと」とか、「えつ」と呼ばれています。“もぐさ”の語源は「燃える草」からと言われています。

蓬はまた、「餅草」という愛称がありますように、日当たりよい土手などで、春まだ浅いうちに若芽を出した蓬の葉を摘み、蒸してから餅に搗き込んで草餅を作ります。草餅は白酒と共に、三月の桃の節句には欠かせません。

蓬はキク科に属します。キク科の植物には芳香性に富んだものが多くあります。

中国はもとより、他の国々でも古来、芳香を放つものは、悪魔とか邪氣を祓うと考えられています。

私の故郷は常陸大宮市ですが、五月五日の節句には、藁葺屋根の軒先に菖蒲と蓬を刺して飾ります。男の子の健やかなる成長を願った行事の一環です。

よもぎと灸治については次の月の号に続けましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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