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第20回 自分の健康は自分で守る

江戸幕府が崩壊し、新政府が成立したのが西暦1868年。我国は近代国家の体裁を早々に整える必要に迫られました。廃藩置県、地租改正などなどです。

また政府は1876(明治9)年に医術開業試験の実施、7年後には、医術開業試験規則および医師免許規則を定めました。この試験科目は、すべて西洋医学に限られていました。これにより、漢方医学は医学・医療として法的には認められなくなったのです。この事は今日まで続いています。漢方医療の範疇に属する、漢方薬・鍼・灸療法などが、所定の手続を踏まないと健康保険が適用されないのも、こうした理由によるものです。

戦争の時代は、西洋医学の薬品・機器など多量生産、多量消費が当然の成行きでした。戦後平和が続くうちに、漢方(戦後は東洋医学と呼称されるようになった)の再認識が進み、大衆の支持を受けて、年を経る毎に受療者が増えて来ました。

漢方薬、按摩、鍼、そして灸という順序で、世間ではブームが来たと言われていました。ブームとはある時期に流行し、やがて廃れることだという意味があります。

しかし、今はどうでしょう。ブームではなく、好いものは良い、と認められたからこそ、廃れるどころか、益々隆盛に向かっているのです。

灸は熱いばかりか、火傷痕(やけどあと)をつくるので、現代人の多くは歓迎されません。痕を残さない隔物灸(間接灸)や輻射熱を応用した灸が最近はもてはやされています。輻射灸は、まだこの稿では説明していませんでした。輻射灸とはよもぎをタバコのように紙に巻き固め、これに火を点じ、ツボ上2~3cmのところから炙(あぶ)るのです。発赤したら次のツボへ移す。という方法で温熱刺激を施します。

鍼治療は針という道具を使うわけですから、素人には出来ません。が、灸治療は民衆の生活に深く浸透していて、今も広く用いられています。灸はお年寄りに用いられる一治療だと言われていますが、現在では若い女性に大変人氣があるのです。月経痛、月経不順、痔疾、不妊症、不感症、冷え症、低血圧症、不眠症といった疾病に大そう効果があることが知られているからです。

私は一般向けに4~5冊の本を世に出していますが、よく読者の方から実践の結果をメールや郵便でいただきます。著者冥利に尽きます。と言いたいところですが、実は先人の多くの体験とその集積、これが今日に伝承されたお陰なのです。古い伝承を発掘し、さらに発展されることが、今日に生きる私たちの責務ではないでしょうか。具体的な治療法は次号以下に譲りましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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