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第25回 自分の健康は自分で守る

中国(伝統)医学には、診断や治療法にも一定の理念・哲学・思想で貫かれています。数詞である1・2・3、第一・第二・第三、一個…など、方角や天・地、内・外といった事象も陰陽・五行説の規定が為されています。

例えば、一は北方、二は南方、三は東方、四は西方、そして五は中央。生物は動物と植物の二種類に分別されます。北方で生命を受け、東方で生育し、南方で成長し、西で消失(死)するという思想付けがなされています。

一は水性、二は火性、三は木性、四は金(石)、五は土。これは五行説の配当です。従って五の土は、四で死にやがて死骸は土に帰るということになります。

筆者は今までに、著名な涅槃図を何点か美術展などで参観する機会がありました。釈迦が娑羅双樹の下で入滅する時の様子を描いた絵です。頭を北方に向け、右脇を下にし、顔を西方に向けて臥し、周囲にその弟子や菩薩、その他、人や象・虎などの悲痛な姿が写し出されています。

日本に中国医学を移入したのは、中国留学僧達でした。この頃は既に現代に生きている中国医学の原形が完成されていました。すなわち、前章で述べた「“生”をどう生きるか、生かされるか」といった仏教思想が中国医学の中に混入し、しかも整然と淘汰されているのです。

春や秋の彼岸、夏の盂蘭盆は祖霊を死後の苦しみの世界から救済するための此岸(現世)に住む者の仏事です。

しかばねの頭を北方に安置すること、前段の彼岸やお盆の墓参の際、木碑や石碑に水を注ぎ、灯火を点じて拝礼する、神棚や仏壇に供物として水と火(灯火)を捧げるのも実は、輪廻転生を願う、人の行動・行為なのです。

市井とは水のある所に人が集まるという意味です。水なくして命を育むことは不可能です。火もまた同根です。陰陽説の一つです。

水は冷たい。水は北方に配当されています。冬になると冷え性の人は苦痛です。根菜類を食べると、体が温まることはよく知らされています。巻繊汁は中国の禅僧が我国に伝えた料理の一つ。大根、牛蒡、人参、椎茸など根菜を油と共にすまし汁にしたものです。冬の食膳としたことは、生活の知恵といえましょう。

このように、中国を中心とし、その後、東洋には自然と共存する英知を発見し、今に生きているのでしょう。

次号につづけます。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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