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第39回 自分の健康は自分で守る

中国の古典から、我国に伝えられた語句が慣用語に使われているものは、枚挙に遑(いとま)がありません。例えば「失敗は成功のもと」とか「禍(わざわい)を転じて福となす」という言葉は多くの人々によく知られるところです。

“月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人なり…。三里に灸するより、松島の月まず心にかかりて、住める方は人に譲り…”。また、“四十(よそじ)以後の人、身に灸を加へて、三里をやかざれは、上氣のことあり。必ず灸すべし”。

この二つの“ ”でくくった文章は、それぞれ、松尾芭蕉の紀行文『奥の細道』の序文の一部と兼好法師の筆による徒然草の第百四十八段の件(くだり)です。

芭蕉は江戸、隅田川の辺りに居を構え、奥明方面への旅を志し、見知らぬ地に望みと不安をないまぜにした氣持を記しています。兼好法師は、四十歳を越えたら健康を保つためには、灸をすえてと、養生の心得をうたっています。

三里というツボは手と足に在ります。特に“足の三里”はツボとして最高。というのは、どんな病氣や症状に対しても、優れた効果を発揮するからです。

上に挙げた、古典の文豪も“三里”について、その著作の中に登場するのも偶然と言うより、必然と言うべきかと思われます。

三里について、もう少し詳しく説明しましょう。足の三里はひざの下の外側。ズボンの縫い目に当たるところ、そこに丸い骨頭が触れます。その前で足首を動かしますと筋肉が浮き沈みする、ここが足の三里です。もちろん、左右の足に在ります。

ツボの刺激の仕方には、指圧・灸・鍼などがあります。読者の皆さんは指圧か灸法が利用できます。

最近は灸をすえても、やけどをしない“もぐさ”を薬局で求めることができます。この灸法は間接灸といいます。

ほかに灸と皮膚との間に紙やスライスした生姜、大根、ニンニク、またびわの葉を置く方法もあります。夏は三つ、冬には五つほど一ヶ所のツボに施灸すればよいでしょう。

因(ちな)みに、足の三里は先に記しました通り、胃・腸の急・慢性炎、胃腸の潰瘍などの消火器系疾患、運動器、循環器、皮膚、泌尿・生殖器・精神・神経系と多岐にわたる治療に用いられます。

冒頭にあげた古典の文章は“予防・養生に心掛よ”と受け取れましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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