第44回 自分の健康は自分で守る
先月にひき続き、七色(七味)唐辛子の中に調合されている薬味の効用について記すことにいたします。
麻の実、漢方薬剤として用いられるときは、麻子仁(マシニン)といいます。大麻仁(タイマジン)・火麻仁(カマジン)との別名もあります。アサ科の麻の実の成熟したものを乾燥し、これを用います。新鮮なものが好いとされます。漢方薬剤の目的としては、緩下剤。老人・子供・妊産婦など体力を消耗した者の便秘に使用されます。また、鎮咳の効能もあります。麻子仁を調剤する処方には、麻子仁丸(ガン)、炙甘草湯(シャカンゾウトウ)、潤腸湯(ジュンチョウトウ)などがあります。
七色唐辛子に入れる目的は、これが油に富み、芳ばしいので配合されたのです。
胡麻(ゴマ)、だれでも知っている、あのゴマ。白色と黒色、白ゴマと黒ゴマ。多くは黒ゴマを用いられているようです。胡麻も油分が豊富に含まれていて、赤飯にかけたり、油を搾って、食用として、いろいろの用途に供せられます。蛋白質も比較的多いのです。麻の実と同様、さわやかな香味があるため七色唐辛子に加えられています。
菜種はナタネ科、アブラナ科ともいいます。アブラナ、ダイコン、ナズナ、ワサビ、オランダガラシ、などは同属です。胡麻と同様油(脂肪)を多く含んでいて、これから油を搾って、夜の灯火に、電氣のない頃は大いに利用されていました。
菜子(ケシ)-カラシともいう。アブラ菜科の一年草。これからマスタードを作ります。辛味があります。
最後に青海苔(のり)。強い芳香性があります。海苔にはミネラルが豊富に含有されています。
このように七色唐辛子の調合を考えてみると、実に理に叶ったものと頷けます。それは現代科学を通してもです。しかし、もともと、人間の生活体験がもとになっていることを忘れてはなりません。
香りは肺の生理機能を高め、辛み成分は、胃や腸に興奮を、つまり刺激を与え、そこの生理活動を促進することになるのです。
韓国・朝鮮の方々が胃腸の具合が悪く、食欲がないという時でも、キムチを食べると、だんだんと食欲が増進すると聞きます。
七色唐辛子を誰が考え、創造したのでしょうか。
七色唐辛子は一つの調味料です。しかし、他にも、私たちの周りには食欲を増進する、役・味・が沢山あります。
胡コショウ椒(ペッパー)、肉ニッケイ桂(シナモン)、丁字(チョウジ・・・クローブ)、生姜(ジンジャー)、洋芥子(ヨウガラシ・・・マスタード)、わさび、紫蘇(シソ)、三葉(ミツバ)、蓼(たで)などなど、どれをとっても、香りと辛味が特長です。
「將(まさ)に言い得て妙」と。
昔は役味と言ったとか。今はこれらを薬味と言っています。
(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)
- 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。
大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。
現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。
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