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第46回 自分の健康は自分で守る

畑に生える雑草と呼ばれるものも、実は食用となったり薬として用いられたりしています。このことは先月号で述べました。その先月号で調合したものが半夏厚朴湯(コウボクトウ)。半夏の和名はカラスビシャクです。引き続き、そのカラスビシャクを使った半夏瀉心湯(シャシントウ)から解説致しましょう。

半夏瀉心湯という処方は、後漢代の末に著わされたという中国伝統医学書である『傷塞論(ショウカンロン)』という本の中に記載されています。この本は薬物治療学における最も重要な古典です。

鳩尾が痞え、吐気又は嘔吐、食欲不振、腹中雷鳴(フクチュウライメイ)・・・ガスが溜まっておなかが張り、ガスの移動で胃や腸が鳴ること・・・して下痢する者に処方されます。東洋医学では、こうした症状群を“証(ショウ)”といいます。半夏瀉心湯の証の中でも最も重視するのは、鳩尾の痞えです。診察法の一つに舌診というのがあり、舌の色や厚みなどを診みます。舌に白い苔のようなものがある場合、上に挙げた“証”と共に半夏瀉心湯という診断を下くだします。つまりは半夏瀉心湯を服用するとこれらの症状は改善されるか、又は治るということです。

あまり専門的になってはと控えていましたが、ここに半夏瀉心湯の処方を記します。

  • 半夏5g/黄(オウ)ゴン、乾姜(カンキョウ)、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)各2g/黄連(オウレン) 1g

この処方を600mlの水に入れ、おゝよそ30分間で400mlに煎じつめ、ここで火を止め、よくかき混まぜて、再び火を入れて300ml位になったら火を止め、煎じた薬物を濾こし去り、湯液を一日三回に分けて服用する。湯トウとは湯液をいい、処方の下に湯がつくのは煎じ液として用いることを表わします。ちなみに○○丸、○○散、という処方名は各々丸薬、散薬(粉薬)として服用するを主とするということです。

なお、薬剤名の解説は略します。必要が生じたら、漢方薬を扱っている薬局等で相談して下さい。

次に半夏白朮天麻湯(ビャクジュツテンマ)について。痰厥(タンケツ)・・・水毒が逆上すること・・・の頭痛を治す。普段から胃や腸が弱く、胃アトニーで、胃内停水があって、頭痛やめまい、嘔吐などの症状が慢性的にある人に用いて治すを主とします。処方も記しておきましょう。

  • 半夏、白朮、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンビ)、蒼朮(ソウジュツ)各3g/麦芽(バクガ)、天麻、神麹(シンキク) 各2g黄蓍(オウギ)、人参、沢瀉(タクシャ)各1.5g/黄柏(オウバク) 1g/乾姜(カンキョウ) 0.5g

煎じ方は半夏瀉心湯の要領でよいでしょう。陳皮はミカンの皮を、乾姜は生姜の表皮を去り石灰汁につけて、それぞれ乾かしたものです。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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