第48回 自分の健康は自分で守る
漢方医学とは、中国の"漢" の時代に、一定の理論と、それに基づいて確立された治療法を指していわれます。
書き出しの文章を、少し変だと思う方もおられるでしょう。そうです。先ず何事に依らず、経験、体験、つまり実践を通して、こうすればこうなるという経験的事実によって得られた法則から、理論が成立することになるのです。
日本では、戦後間もない昭和25年に"東洋医学会" が創立されました。その後、漢方医学は時代とともに発展して、次第に東洋医学と呼ばれるようになりました。
中国の長い歴史の中で、人々はその生活や体験、事象から様々の経験則を学びました。その中で、病気や諸症状の苦しみは、悪霊、言い換えれば"邪(ほてり、冷え、痛み、しびれなど)" が身体の内に入り込み、悪さをすると考えたのです。
邪を駆逐するためには、どうしたらよいでしょう。何事も始めは、非常に単純な発想から生れるものです。肩が強(こわ)ばり痛みがあったとします。木の燃えさしをその部位にチョッチョッと付ける。あるいは尖(とが)ったもの、例えばバラの棘(とげ)とか、小魚の骨をチクチクとつつくかちょっと刺します。また手掌や手拳、手指で揉んだり、叩いたり、指圧を加えたりします。すると邪は堪(たま)らなくなって、体外に逃げ出すと考えたのです。また邪は苦味が嫌いと思ったのでしょう。"良薬口に苦し"と言われるように、漢方薬は内服されます。結局上記のような思わくが的を得て、治療法が発展して来たのです。今日では、自然科学的な理論で説明されますが、している行為は基本的に変わりがないのです。
鍼治療は物理療法の一方法で機械的刺激と分類され、灸治療は温熱刺激、そして按摩は指圧及び摩擦刺激というように分けられます。言うまでもなく、永い経験から、どのツボを刺激すると、どのような病氣か症状の改善に効果があるかが知られています。この、ツボと内臓をつなぐ関係を、内臓体壁(皮膚)反射、体壁内臓反射と現代医学では表現します。
この連載では、身近にある、ツボ療法や草根木皮を上手に使って、"自分の健康は自分(達)で守る"ことをテーマにして記しています。来月の記事は、これまでより具体的な内容でわかりやすく伝えるつもりです。ご期待ください。
(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)
- 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。
大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。
現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。
- 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
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