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第55回 自分の健康は自分で守る

ついこの間迄、櫻の咲くのを心待ちにしていましたが、もうとうに葉櫻になってしまいました。そう、新緑の美しい草木が風にゆれています。自宅から診療所に向って歩むうちに、路傍やお屋敷の垣根に目を向けると、実に多くの漢方薬や民間薬として利用される植物が盛春を謳歌しているのを見つけることができます。

今回は、アイウエオ順にいくつかの草木を挙げ、その利用法を紹介致しましょう。

私は東京四谷に住み、徒歩5~6分ほどの距離にある職場(治療室)に向かうのですが、そんな短い間であっても、アカネ「茜根(あかね)」、アケビ「木通(もくつう)」、カリン「花梨(かりん)」、ギシギシ「洋蹄(ようてい)」、クチナシ「梔子(しし)」、アンズ「杏子(きょうし)」、イタドリ「虎杖(こじょう)」などに出会うのです。

茜根については、以前に述べましたので略します。

漢方薬や民間薬の6割は「利尿作用」、つまりお小水をスムーズに体外に排泄する薬剤といわれています。アケビもその重要な薬剤の1つです。

多くの方々は、アケビの利用方法をご存知ないでしょう。戦後といっても50年以上経っています。それ以前は、祖父母、父母、その子の3代が家族として、一つ屋根の下に住んでいました。ですから、祖先からのいろいろな生活の知恵が代々に伝承されてきたのです。

アケビは蔓性(つるせい)の植物です。その茎を乾燥させ、輪切りにして用います。特に味はありませんが、少々えぐ味があります。煎じれば味の問題はないです。消炎性の利尿薬で腎臓炎や淋疾患に殊に使用されます。漢方処方では、当帰(とうき)、四逆湯(しぎゃくとう)、木通散(もくつうさん)、当帰四逆加呉茱萸湯(とうきしぎゃくかごしゅゆとう)、五淋散(ごりんさん)、消風散(しょうふうさん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などがあります。

次にカリン、この言葉は聞いたことがあるでしょう。そう、のどあめに入っています。カリンは、バラ科の落葉高木でモモに似た紅色の花をつけます。秋になると、黄色の果実がなり、芳しい香りを放ちます。この果実を輪切りにし、砂糖漬け(さとうづけ)などにします。それをお湯でのばし、適宣飲用します。咳止め、利尿剤として利用します。芳香性がありますから果実を部屋の隅に置き、清涼の目的にされることもあります。

私たちの周りには、知れば知るほど、自然の恵みに浴することが実に多いのです。次回もこのような記事を書きたいと考えています。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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