日本シティジャーナルロゴ

第61回 自分の健康は自分で守る
実葉根までも薬となる枸杞

先月は秋に関わる慣用句の中から“秋茄子(ナス)は嫁に食わすな”などについて紹介しました。実はナス科の植物には、皆さんが意外に思われるような仲間達が多いのです。今月もナス科のグループの中から、“枸杞(クコ)”に焦点を当てて考察してみましょう。

ナス科の仲間には、ジャガイモ、トマト、ホオズキ、トウガラシ、ピーマン、そしてタバコ、ハシリドコロ、チョウセンアサガオ、ハダカホオズキ、ヒヨドリジョウゴ、それに生け花に用いられるフォックスフェイス(キツネナス)などなど、枚挙すればまだまだあります。こうしたナス科の植物は、食物になるもの、嗜好品になるもの、有毒なもの、薬品に使われるものと実に多様性に富んでいます。

では、枸杞について考えていくことに致しましょう。実に生命力が強く、荒地でも堂々とはびこっています。都内であれば線路脇、郊外なら路傍などで風に揺れているのを見かけることがあります。夏になると直径1cmぐらいの淡紫色の可愛い花をつけます。同時に柔らかい若葉が生え、この葉を摘んで、おひたしにしたり、ご飯に炊き込みますと、美味しくいただけます。私の父親は、たいそう物知りで、他にウコギの芽や、なんと漆(ウルシ)の芽などを茹でたりして、食べさせてくれました。みんなこの時期の木の芽です。  枸杞は、実も、葉も、そして根も薬用となります。実は枸杞子(クコシ)、葉は文字通り枸杞葉(クコヨウ)、根は地骨皮(ジコッピ)と名付けられています。

漢方の故郷である中国では、枸杞子をみやげ物店で売っています。卵形の果実は熟すと赤い色を帯び、これを乾燥し枸杞酒(クコシュ)にして用いられます。漢方では杞菊地黄丸(コギクジオウガン)に処方されます。おしなべて葉、果実、それに根にも強壮の効果がありますし、他に鎮咳、解熱用としても使われます。地骨皮は清心連子飲(セイシンレンシイン)、滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)などに処方されます。

先に記しましたチョウセンアサガオやハシリドコロは有毒ですが、いずれも上手に処理して薬用として供されています。附子(ブス)の稿で記しましたように、有毒な植物が有用な薬剤として利用されることは、決して少なくありません。しかし、素人が不用意に用いることは大変危険で、命を落とすことにもなりかねません。医師や薬剤師の指導を必ず受けて、適切に利用して欲しいものです。最後に有毒な植物から作られた製薬は、強力な効果を表すことを一筆加えておきましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

© 日本シティジャーナル編集部