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第63回 自分の健康は自分で守る
蜜柑の皮は貴重な漢方薬

この時期は柑橘類が実に美味しい季節です。蜜柑(ミカン)椪柑(ポンカン)などが果物屋さんの店先を黄色く彩っています。蜜柑の皮は、漢方薬として広く用いられており、陳皮(チンピ)と名付けられています。新陳代謝、陳根、陳腐、陳編などの熟語があるように、“陳”には古いという意味があります。確かに陳皮もまた、乾燥した古いものほど好いと伝えられています。

私が、漢方医学を自分の一生の仕事にしようと志を立てたのは17歳のときでした。漢方医学(現在は東洋医学と称されています)には漢方薬剤を用いる湯液(トウエキ)療法、針やもぐさを用いて治療を行う鍼灸療法、手指を使って治療する按摩(アンマ)などがあります。

私は鍼灸の道を選びました。先の記事でも書きましたが、中国の後漢時代に一通りの基礎が完成したので“漢方”と呼ばれています。古い歴史を有しており、医学書は勿論、漢字で記されています。そこで私は、この世界に飛び込むと決意したとき、漢字の成り立ちを徹底的に研究・学習することにしました。象形文字から今日使われている楷書まで連なる漢字には、本義といって元の読みと意味と形があり、時代を経るに従って派生義が生じます。例えば“白”は色の白しろのことですが、明白(はっきりする)、自白、白状(自分の行動をはっきり示す)など、はっきりさせるという意味があります。また敬白の白は、申し上げるという意味をもっています。

さて、蜜柑の皮、陳皮の由来を学んでいて、(チン)という漢字には(開く・表に出す)という意味があることに気付きました。陳列、陳述、陳開、陳謝などの熟語には、「表に出して○○する」という意味があります。“陳皮は古いほど好い”という通説が中国はおろか、日本でも言い伝えられ、今日に至っていました。しかし、柑橘類はみな果肉を“表に出す”ために果皮を開きます。従って古代中国人は蜜柑の皮を陳皮と名付けたのではないかと考察するにいたりました。このことを、日本東洋医学会の有力な方々に話したところ、「最もな考えだ」と称賛を得ました。

陳皮の薬効には、芳香性、健胃、鎮嘔、鎮咳、去痰(キョタン)、感冒、吃逆(キツジャク)(しゃっくり)などがあります。ちなみにアメリカや、ヨーロッパでは、感冒にかかったときにビタミンCの錠剤を大量に服用するのが常識と聞いています。柑橘類には、ビタミンCが豊富に含まれていることは衆人の知るところです。感冒を防ぐためにも、空気の乾燥するこの時季、流水での手洗い・うがいを励行し、柑橘類を食しましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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