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第65回 自分の健康は自分で守る
心の病は心で治す

先号では、私が発起人となって始めた精神・神経科専門の病棟(病院)での、ボランティア活動について記しました。当時の病棟は、閉鎖病棟と開放病棟に分けられ、さらにホールの利用可能な場所も男性と女性に分けられていました。

ヒトは、喜び、嬉しさ、誇り、自負・悲しみ、淋しさ、悩み、苦しみ、憎悪(ぞうお)など、最も多くの感情を持っている動物だといわれています。そしてヒトは元来、心身共に自由を望むものです。しかし、生まれや生活環境、学歴や職歴といった違いから、多種の軋轢(あつれき)を体験する中で心が傷つくこともあります。こうしたことからトラウマが生じます。トラウマとは、“心理的に大きな打撃を与え、その影響がいつまでも残るようなショックや体験。心的外傷。精神的外傷”(『明鏡国語辞典』より)のことです。

心に傷をもった人たちは、どんなに笑顔で話しかけても、最初は決して心の扉を開こうとしません。その扉を開いてもらうには、信頼関係が築かれていなければなりません。「何故、ここ(病院)に入ったのですか」などと、性急に訊ねることは禁物です。まずは「食べ物はどんなものが好きですか」といった本人の答え易い質問をします。さらに、質問をする前には「私はうどんが大好きなんですよ」と、必ず自分のことを紹介することが大事です。このようなたわいのない会話が大切なのです。その前に、原則としてお互いの人格を認めあうことです。尊大になったり、卑下することもあってはなりません。

病棟の多くの方々は、不本意ながらも家族によって強制的に入院させられたり、あるいは警察によって入院手続きが行われたりしていました。そのような話を看護師さんや本人から聞いたときは、とても驚きました。さらに胸が痛んだのは、自分が住んでいた所から遠く離れた病院に入院させられていることです。近所の人たちに、家族に心の傷ついた者がいることを知られたくないからだとか。そして、家族や友人はほとんど見舞いにも訪れないということでした。しかし、あれから30年以上もたった今、改善がなされていることでしょう。

“心の病は心で治す”ということが私たちの願いです。

次号に続きます。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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