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第68回 自分の健康は自分で守る
西洋医学と東洋医学の融合

心身一如(しんしんいちにょ)とは、生命(いのち)には肉体と精神が存在していて、この二つは分けることが出来ないという考え方です。東洋人である私たちには、とても馴染みのある考えでしょう。ところが現代医学は、自然科学理論を金科玉条(きんかぎょくじょう)として発展してきました。

この連載でもたびたび記してきましたが、“科”というのは、分ける、弁別するという意味です。現代医学では、肉体と精神を分けて考えているのです。

現代(西洋)医学はできるだけ事柄を細分科し、その実態・本質を客観的かつ普遍的、妥当的に観察し、理論を導き出しながら発展してきました。別のいい方をすれば、間口を狭め奥行きを深く観ながら、その事象を認識しようということです。これが科学の発展ということになります。

このように、現代医学はヒト(・・)身体(からだ)を細分科して発展して来ました。眼科、耳鼻咽喉科、歯科、内科、外科、消化器科、呼吸器科などなど。私は1970年初頭、中華医学会の招聘を受けて中国において鍼麻酔術や耳鍼療法を学び、日本での普及に務めました。中国では、国是として中国伝統(いわゆる東洋)医学と西洋医学とを結びつけ、世界に先駆けて新しい医学体系を創造しようと努力しています。

その一事例として、西洋医学における鍼麻酔の利用があります。口腔外科や胸部外科の手術に麻酔薬を全く用いず、手にあるツボに鍼で刺激を加えて麻酔を施し、誘導時間15~45分ほどで、手術部位にメスを入れるのです。私たち日本の医師や鍼灸師は手術室に招かれ、手術の一部始終を見学させて戴きました。その光景には、ただ敬嘆(きょうたん)するばかりでした。鍼刺激という中国伝統医学と、外科手術という西洋医学。まさに中国医学結合の最も良い事例の一つです。

口腔外科で使われたツボは、合谷(ゴウコク)内間(ナイカン)。胸部外科(肺の上葉の摘除)で使われたツボは、三陽絡(サンヨウラク)で、三陽絡からへの透刺(トウシ)です。透刺とは、あるツボからもう一つの別のツボに向けて刺鍼することです。従って針は一本しか用いません。但し、両手同時に施術し、それぞれが対称になるようツボを用いていました。

次回へ続きます。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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