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第71回 自分の健康は自分で守る
美しい花も漢方薬

“立てば芍薬(シャクヤク)(すわ)れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ゆり)の花”多くの方々はどこかで耳にしていられることでしょう。国語辞典を引くと、“美人姿を形容する言葉”と出ています。確かに相違ありません。しかし、この言葉にもっと基本的な意味が隠されていることは、意外と辞書にも載っていません。

実は、芍薬も牡丹も百合も主要な漢方薬で、いろいろな処方に調剤されています。芍薬は中国から渡来した植物で、足利時代(1445年)に栽培の記録があると伝えられます。芍薬の根の表皮を去り、根の中心にある木質部を取って、これを被っている部分を薬剤として用います。

芍薬は女性ホルモンの分泌を整え、肌を滑らかにし、艶やかにすることがすでに二千年も前から知られていたのです。また筋肉の緊張を緩め、痛みを鎮め、血液循環を促す働きがあります。従って腹痛、胃痙攣(発作的に上腹部が激しく痛む病症で胃潰瘍・胆石症・虫垂炎など、さしこみ(・・・・)とか昔は(シャク)と言われていた類、筋肉痛、座骨神経痛に有効です。

民間薬(日本において民間で伝承されて来た草根木皮の治療法)は単味。言い換えれば一草、一根で使われることが常でした。現在は何種類もの草木を加えて、煎じ、服用されることがあります。しかし、学術的には十分な検証がなされていないのが現状です。

牡丹の漢方薬名は牡丹皮。芍薬と同様、根の表皮を取り、更に根の木質部分を取り除いて根の主要部分を薬剤として用います。

牡丹は花王とか富貴草(フキソウ)などと言い(たた)えられるように、中国では古くから観賞用として(たっと)ばれています。

薬理作用も多方面に及び、中枢神経抑制、血糖下降、抗アレルギー、抗炎症作用、強心作用、の他に、利尿や胃液の分泌抑制等にも効果が認められています。

応用としては、(ふる血)、婦人科疾患における月経困難症、月経不順、不妊症、虫垂炎、痔疾などが有名です。漢方処方では大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が挙げられます。

百合根(ヒャクゴウコン)(漢名:ゆり(・・)の根)。この百合の仲間=ユリ科としてはニンニク、ラッキョウ、ネギ、ノビル、ニラ、アサツキなどが挙げられ、いずれも食用にされています。百合以外は独特の強い臭気があり、共通する作用は滋養強壮の作用があることです。特に百合根は、呼吸器系の疾患に用いられることが有名で、鎮咳、去痰、感冒、病後の身体不調に使われます。植物成分としては、デンプン、ビタンミンC、ブドウ糖が豊富に含まれています。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
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