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第73回 自分の健康は自分で守る
風邪に効くツボ

病気にならない為に、常日頃より保健衛生、つまり養生に留意することは、読者の皆さんは先刻ご承知のはずです。しかし人は、知識とその実践の間にはギャップがあるものです。貝原益軒によって著された江戸時代の代表的な養生書は、和漢(日本の伝統的な民間療法と漢方=漢方薬・鍼・灸・按摩・氣功療法など)の事跡と自らの経験に基づき平易な和文で述べられており、この内容は今日でも広く語られ、私たちの生活に広くいかすべきです。

先に述べましたように、ヒトは賢い半面、野坊図(のぼうず)にその知識を外してしまう愚かさを備えています。一時的な不健康ならば、少し養生すれば元に戻りましょうが、長い不養生は、思いもかけない持病や重病になること受合いです。

私がこの連載を依頼されたとき、中国の医書の古典に“未病を治す”という言葉を発見し、これこそ医療の原点と信じ、題名とさせて頂きました。

さて、先月は“風邪は万病のもと”について記しました。今回はそれについてのツボ療法に関してお知らせしましょう。ツボを漢字で表すと、(ケツ)となり、このツボには(ケイ)穴と()穴と穴の3種類があります。経とは縦糸という意味です。すなわち、上から下に走る、垂れた糸のことです。竒穴の竒とは、竒数、1つ、すぐれる、あやしいなどの意味を持っています。経穴はいくつかのツボを組み合わせて治療しますが、竒穴はただ1つのツボを用いてある病気、もしくは症状を著しく改善するか、治すことが出来ます。例えば、太陽というツボは頭痛や疲れ目、かすみ目などに不思議なほど神効をみます。

ちょっと横道にそれました。ここで、風邪の症状を軽減、もしくは治すことの可能なツボとその使い方をお伝えしましょう。ツボには“風”のつく熟語がいくつもあります。例えば、風池、風府、(ヘイ)風、風門などなどです。風をひくとは、言わず語らず風邪と表します。外から体内に侵入する、病気の原因になるもの。これを“風邪”と漢方医学では表現し、それが、今日に伝えられています。

風邪の初期症状では、クシャミ、悪寒(寒気)、鳥肌、震えなどが発症し、これらは言うまでもなく発熱したからにほかなりません。こうした時、先ず熱が出たら解熱を心掛けることが肝要です。熱を下げれば、先の初期症状が解決できることは、言うまでもありません。そのツボは“大椎(ダイツイ)”です。このツボの取り方は比較的簡単で、(くび)を前にかしげた時、左右の肩の先端を結んだときに背骨が大きく降起する、その下にあるのがこのツボです。大椎の刺激は直接灸を施します。米粒大のもぐさを軽くひねり、火をつけます。熱のあるときは、直接灸を仕込んでも、灸の熱さをなかなか感じません。熱感を覚えるまで続け、熱を感じたら、そこで止めます。クシャミが出て、悪寒を感じた初期でしたら、ボヤを消したと同じように直に風邪を防げます。50年以来の私の診察体験で自信を持っておすすめできます。

ツボ

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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