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第76回 自分の健康は自分で守る
漢方薬の発見などの成行きについて

17世紀に活躍したフランスの哲学者であり数学、物理学者でもあったパスカル。彼の言葉に、今日でも慣用句のように使われているものがあります。人間は葦のように弱いけれども、それを知っている人間は、知らない宇宙よりも偉大であると。

太古より人々は生活、労働の体験の中で、いろいろなことを発見し、発明して来ました。

東洋医学(漢方)も、その一つです。伝説上の帝王、神農は百草をなめて医薬を作り、また五弦の琴を作ったといわれています。日本民族も永い歴史の中で幾多の草根木皮から薬になるものを見つけてきました。先にも記しましたが“げんのしょうこ”や“せんぶり”はいうに及ばずです。

今回は“べにばな”について検証してみましょう。山形県の県花ですね。中国では紅花と記し、日本の訓読みでベニバナ、古くは末摘花と呼ばれていました。

ところで『源氏物語』の第六章に「末摘花」が載っています。この植物は上の方から咲いてくるといわれます。従って末から花を摘むことから末摘花と呼称されるようになったということです。

漢方薬草にしても民間薬草にしても、染料の原料として用いられるものが多くあります。

さて、べにばなは二年草で、夏に花をつけます。最初は黄色を帯び、やがて朱色に変化します。人が何かを発見、もしくは発明するという事は、意外と最初は単純な発想からです。

文字通り紅花は赤い色の花です。そこで、女性の月経、赤い色の下血にインスピレーションを感じた古人が、実際に用いて体験したというのです。むくみには水蓮の草を使ったということも、今日実際に処方されている物があります。紅花の利用方法、先ず摘んだ花を乾燥させます。保存には当然のことながら、湿気を避けるため、缶やしっかりしたビニール袋に入れることです。そして暗いところに保存することが大切です。紫外線は化学線ですので、物質やその成分を変えてしまいます。

先に述べた通り、特に女性の種々の頭痛やめまい、肩のこり、のぼせ、腹痛に特効があります。漢方処方では、葛根紅花湯(カッコンコウカトウ)(葛根、芍薬、地黄(ジオウ)黄連(オウレン)山梔子(サンシシ)、紅花、大黄(ダイオウ)甘草(カンゾウ))・強神湯(紅花、強蚕(キョウサン)棕櫚(シュロ)、甘草)。強神湯は脳出血の妙楽として有名です。

ことほど左様に野に山に里にある動物や鉱物、植物を上手に使って、私たちの祖先は自らの健康や病気の治療に用いて来たのです。

私たち現代人は、薬というと、製薬会社で造られたクスリを安易に服用したり、外用薬として用いていますが、自然の中の動植物や鉱物を、先人の生活の知恵をもう一度、見直すことが大事ではないでしょうか。勿論改めて、その事象を調査し、研究することが肝心ですけれども。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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