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第83回 自分の健康は自分で守る
産まれながらにツボをもってこの世にあらわれる

この時季になると上空の空氣は大そう乾き、いわゆる“天高く馬肥ゆる秋”という慣用句があります。一般的には“秋は空が澄み渡って高く晴れ、馬は肥えてたくましくなるという意で、秋の好時節をいう”(『岩波書店・広辞苑』)とあります。米は言うに及ばず、蜜柑(みかん)、葡萄などの果物、さんまや(さけ)といった魚類などなど。夏季の暑さで疲労した身体は、暑くも寒くもない秋に回復します。衣食住は生活する上で最も基本的な条件です。冒頭に戻りましょう。“天高く”この意味は漢民族にとって戦々恐々の(とき)なのです。黄河の北にはモンゴール民族が暮らしています。黄河の流域は肥沃の地です。いろいろな穀物や野菜・果実が豊かに収穫されます。これを狙ってモンゴール族は馬に乗りやって来るのです。これを防ごうとして、六千キロメートルにも及ぶ万里の長城(・・・・・)が築かれたわけです。

そんな秋、私たちは食欲が進むのをいいことに、ついつい過食過飲になりがちです。そこで○○胃散や○○胃腸薬を服用することになります。決してこうした行為をいけないとは言いません。私は漢方薬や鍼灸の治療を専門としています。人は生まれながらに“ツボ”を持っています。私は患者さんに、「そのツボにうまくスイッチを入れるんです。するとあなた自身の治ろうという機能(自然治療力)に働きかけて、あなたの力で治ってゆくのです。私は上手にツボどころにスイッチを入れただけです。」こういう説明をします。ですから、恐れ多くも、“治してやりましょう、とか治してやる”といった言葉は使いません。謙虚に考えてみれば、極く当然の事です。これは中国医学の中心的な考え方です。ところが現代医学、医療に携わっている方々は、○○してやったという思いを持っています。西欧から入った医学・医療は自然科学に立脚しています。科学とは分けて、その論を証明しようとします。(たと)えば人の身体を歯科、耳鼻科(耳鼻咽喉)、脳外科、精神、神経科、というように分科します。人は眼も歯も耳も…というふうに繋って、一個の心身としての生命体を構成、維持しているのです。これと同様に人は己だけでは生きることは出来ません。人それぞれに助け合ってこそ、生を保つことができるのでしょう。この稿は一見脈絡がないように思われるでしょうが、次回で(まとめ)ることといたしましょう。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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