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第85回 自分の健康は自分で守る
東洋医学の三快と四診

東洋医学に三快という基礎的な考え方があります。私たちが生活してゆくための原則とも思われます。つまり、快眠・快食・快便のこと。良く眠り、飲食物を美味しく味わい、嚥下(エンゲ)(のみくだすこと)し、快く大便、小便を排泄できること。この三条件が満たされることは健康である、と診断されます。従って、初診の患者さんのカルテを作るときは必ずこのことを問診します。(のち)嗜好(シコウ)(たしなみこのむこと)、アルコール(酒類)、タバコを吸っていますか、と聴きます。勿論、一日にどの程度の量をと()います。生活環境と病症もしくは病氣との関係を考察する上で重要です。

他に四診という診察法があります。すなわち(ボウ)(ブン)(モン)(セツ)のこと。望診(ボウシン)とはのぞむ、見ること。言う迄もなく、これから治療をする人(患者)の姿勢、動作、顔色などを診て、聞診(ブンシン)とは文字通り声の出し方や言葉を、それに加えて本人の発する臭いを嗅いで、問診(モンシン)は先に述べた外ほかに例えば膝が痛むと訴えれば膝の外側ですか内側ですか、膝蓋骨(シツガイコツ)(俗には膝のお皿)の上側(うえがわ)ですか、下側(したがわ)ですか、後ろ側ですか。 更には階段を登る時ですか、降りるときですか。立ち()がるときですか。というように(くわ)しく(たず)ねます。切診(セツシン)とは、受診者の訴えに応じてその局所に手を当てて、熱があるか、(はれ)れているか、堅い(はっている)か。 軟弱であるかを診定(みさだ)めることなどです。

しかし、切診の重要なことは、脈診や腹診です。脈診は手掌の手首のところの橈骨(トウコツ)動脈部に、示指(ジシ)(人差指(ひとさしゆび))と中指と薬指を並べてあてがい脈状を()て、五臓六腑の虚実を判断します。この診療法を極めるには数年の修業がかゝります。腹診は日本で発し、今日に至った診療法です。鳩尾(みぞおち)から臍の下、陰毛の際にある横に張った骨(恥骨)との間で臍の左右上下と、臍を中心とした周囲の五つの部位の軟弱を診て、五臓六腑の虚実を診断します。言う迄も無いことですが、私たち東洋医学に携わる者は、現代医学と違って機械、器具、または薬剤、試薬等を通じて、診察・診断が発達しない。古代の伝承医学を守りつつ、医者(又は治療家)の視覚や聴覚、触覚、くり返しになりますが患部の状態、つまり、その部分が強張(こわば)っているか、軟弱か、熱を帯びているか、冷えがつよいかなどなどを検診します。

その他には家族、特に本人より三代程さかのぼって父方や母方に遺伝的に比較的特筆すべき大病を訪ねることは重要です。しかし、近年はプライベートが尊重されますので、患者の現症が遺伝性の病症と直接関係がないと考察される場合は問診を控えることは言う迄もありません。

上手な医者(治療家)はこうした問診から治療に必要な情報を捉え、先の切診に歩を進めます。下手な医者は問診もほどほどに、患者の訴えから碌に患部に触れもせず、パソコンに向かい、処方を捜出し、「これを持って薬局で薬をもらって下さい」で終えます。日本語では、治療のことを”手当”ともいいます。東洋医学系の医療では先に述べた通り丁寧な問診と加療を欠かしません。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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