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海から学ぶ、海で学ぶ

ヨット

ますます進む少子化、低年齢層の犯罪増加、企業の求める人材が学歴重視から実力重視へ、大企業の崩壊、デフレの進行等、現在の日本では次の時代へ移る混沌とした状況がまだまだ続きそうです。中でも一番身近で重要なことの1つに教育問題があげられます。教育といっても単に学校教育だけでなく、家庭内での教育、社会人として自立した後のトレーニング、老人になって最後の人生を楽しむための教育まで幅広い意味でまだまだ考え直していかなければいけない事は山積みです。

そんな中で是非経験してもらいたいのが海での教育です。今回ご紹介するのはセイルトレーニングと呼ばれるもので、元々はイギリス始まったプログラムですが近年日本でも活動しています。"海星"という帆船が一年中各地を巡り船長をはじめとするスタッフが生徒を受け入れて指導するもので、プログラムは日帰りコース、2泊3日コース、1週間コースと様々ですが15歳以上であれば参加でき、中学生から社会人まで内容は同じです。参加したメンバーはスタッフから簡単な説明を受けた後グループに分かれ、スタッフのサポートのもと操船していきます。帆船の帆を揚げるためには命綱をつけて高いマストの上へはしご段で登り、ヤード(マストに直角に交差している横桁)に結ばれている帆をしばっていたロープをほどき、デッキの上に導かれた別のロープを数名で力をあわせて引っ張り上げます。海上で揺れているマストの上はスリル一杯で、ディズニーランドでもユニバーサルスタジオでも味わえない本物の恐怖心がいやでも味わえます。(尤も高いところが大好きな人にとっては最高の楽しみとなりますが)。帆を揚げた後は余ったロープの整理をして一段落です。風さえ安定していれば舵を担当する人を除いては後はやることがなくなりますが、その時間を利用して楽しいゲームがいくつも用意されています。いずれもグループ対抗となっていますのでこのプログラムで初めて顔を合わせた人同士がどうやってコミュニケーションを取っていくのかということも自然に学べる仕組みになっています。夜は海上に錨を下ろして停泊し、夕食後はテレビのない中雑談し就寝。翌日はまた帆走訓練を続けるだけです。

このプログラムは自然を直接感じ取れる海の上で、帆船という閉じられた狭い空間を利用して体力知識を訓練するだけでなく、グループでの共同作業を通じて社会の中での自分の役割や他人とのコミュニケーションの訓練が知らず知らずにできてしまうところが大変素晴らしいところです。海の上から日の出、日没を見るだけでも感激ものですが、夏であれば花火見物もできます。事実私の息子は藤沢市が募集した中学生対象のこのプログラムに参加し、熱海の花火大会を海から鑑賞できたと大満足でした。

教室は海の上のため、当然雨の日もあれば風の強い日もあり同じプログラムといっても参加した日によって内容は大幅に変わります。ほとんどの人は船酔いで苦しみますが、いくら体調が悪いといってもグループで行う作業に参加しなければ船は動かないため這ってでも決められた仕事をしなければいけません。老若男女を問わず参加できるこのプログラム、企業や公共団体が貸切りで利用することも可能なため年々参加者も増えています。海洋国日本にふさわしいこのトレーニングは、海の素晴らしさ、社会における個人の役割、集団生活でのコミュニケーションの取り方、リーダーシップの取り方、仕事に対する責任感、規律ある生活リズムの習得など今まで学校教育で不足していた部分を補完してくれることは間違いありません。学習塾や予備校だけでなくこうしたプログラムを利用していく余裕も是非持ってもらいたいと思います。お勧めです。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部