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免許・検査

ヨット

ヨットやクルーザーは法律上、小型船舶と呼ばれるものがほとんどです。小型船舶の定義としては総トン数20トン未満ということになっていますが、そもそも総トン数で言われてもピンときません。わかりやすく説明すれば加山雄三が最初の頃乗っていた光進丸が小型船舶、今乗っているのは小型船舶ではありません。松方弘樹が海外でカジキマグロを釣っている屋根の上で操縦するモーターボートの小さ目のものが小型船舶、ちょっと大きいのはそうではありません。

こういう決まりがあるということは自動車の車検と同じように船に対しての定期検査があり、操縦するためには免許が必要です。検査は船検と呼ばれ、運輸大臣の認可法人として当初設立された日本小型船舶検査機構というところで実際の検査を受けます。免許は小型船舶操縦士という資格が必要です。いずれの制度も人命の安全の保持を図る必要性に基づいて設けられているということですが、正直なところ検査を受けた船だからといって安全とは限らず、免許を持っているからといって船長を信用して命を預けることはできません。船検は船の各部分をチェックし、法定備品がきちんと揃っているかチェックします。ところがこの法定備品の中には本当に意味があるのか疑問の残る物もあります。例えば船を停泊中に掲揚する事になっている黒球というものがあります。今まで25年間一度も使ったことがなくその事で問題が発生したことも無いしろものです。従って狭い船内に常時置いておくのも邪魔な為、大きな声ではいえませんがもっぱら検査の前になると隣の船から借用し、検査が終わると返却するという方法を取っています。また逆に、ヨットの場合一番大事なマストを支えるワイヤの部分のチェックは検査対象ではなく、錆びて中が切れかかっているかどうかは自分たちでチェックする必要があります。当然のことながらセール(帆)の痛みやシート(ロープ)のほつれ、各部ベアリングの減り具合など天候が悪化し一番大変なときに壊れやすい部分についても検査対象外です。こういう本当に大事な部分は、あたりまえのことですが各自の責任においてチェックするしかない訳です。あくまでも元々はモーターボートを主体に考えられているため船体とエンジンが主な検査となっている訳です。

整備不良で事故を起こすと他人に迷惑をかける可能性が高い自動車とは違い、船ではほとんどの場合乗っている当人が遭難してしまいます。事故があっても当事者のみが被害を受ける訳で、本当にこの形式的な検査が必要なのかどうかいつも疑問に感じるところです。手を抜けば自分自身が痛い目に会う自業自得の世界では、形式的な検査ではなく本当の意味でチェックすることが重要です。年に数回しか海に出ないレジャー族にとってはつい手を抜きがちな部分です。本当に命がかかっている重要なことだということを理解するのは、実際に一歩間違えれば遭難する危ない目に合わないとなかなかわかりません。穏やかな海が30分後には突風が吹き、横殴りの雨とたたきつける波を受けながら肝心なところで帆をおろすことができない修羅場を一度でも経験をすると、自然と出港前のチェックも念入りにするようになります。自分の身は自分で守るという基本を常に忘れず、安全に海を楽しむことが大切です。海の上だけでなく日常生活の中でも本当の意味での自己責任が問われる時代になってきています。他人任せでは無くあくまでも自分の事は自分でしましょう。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部