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服装

ヨット

ヨットに乗る服装は?また、どんな靴を履けばいいのでしょうか?季節や乗る船の大きさ、レースなのかクルージングなのかということで違ってきますが、基本的には暑さ寒さに合わせて体温の調節ができ、動きやすい格好であれば何でもかまいません。一番ハードな服装を要求されるのが冬の小型ヨット(ディンギー)に乗る場合です。20年ほど前まではダイビングと同じウエットスーツを着用し、その上からトレーニングウエアを着るのが一般的でしたが、現在の主流はドライスーツと呼ばれる生地の薄い動きやすいタイプに変わっています。足はもちろん防水、防寒のためのピッチリと締め上げるタイプのブーツ又はゴムの足袋。何しろ船の上とは言え風速5m以上ともなれば、波を突っ切る際は水飛沫を全身に浴び、一つ間違えると転覆して海の中に落ちる訳ですからそれなりの準備は必要です。現在は学生ヨット部でさえほぼ全員がカラフルなウエアに身をまとい防寒対策も万全ですが、私が現役学生だった20年前はまだまだ、寒さも気合を入れれば何とか乗りきれるとばかりに、着るものを買うお金があれば飲み代に使ったほうがましという猛者も何人かいました。先輩から譲り受けた合羽は当然のことながら穴だらけで、穴の開いた部分の補修はガムテープを貼るだけの簡便な処置、水はしみるし、ちょっと引っ掛ければすぐに裂けまた穴が開いてしまい防水の役目は全く果たさない、見るからに貧乏たらしい冴えないスタイルです。但し、海の上へ出てしまえば他人がどんな格好をしているかなどはいちいち見ているひまもなく、また実際に間近で確認できることもほとんどないので気にする必要はありません。ただ当の本人は本当に寒くなるとやたらと意味もなく大声をあげ気を紛らわすようになっていくのが常でした。

反対に何も気にせずラフな格好でかまわないのがちょっと大きなクルーザーに夏乗る時の服装です。日焼けさえ気にしなければ海水パンツ1枚、靴ははかず裸足のままでOKです。本当は救命胴衣(ライフジャケット)を着用しなければいけないことにはなっていますが、8月の夏の盛りに朝からうだるような暑さの中、桟橋に係留しているヨットに乗りこみ出航準備を終了し、港から出てセールをあげエンジンを切った瞬間に海水パンツ1枚で飲む冷たいビールの味に勝るものはありません。但し、船の上は様々な金具がついていて裸足では思わぬ怪我をして危険なため、最初のうちは運動靴を履いておくのが無難です。

何人も乗りこむレースではメンバー全員おそろいのウエアできめてくる場合もあります。船上できびきびした動きと一糸乱れぬチームワークを見せ、成績も良いと本当にカッコのいいものですが、動きはバラバラ船は遅く限りなくビリに近い成績の場合は見掛け倒しでかえってみっともないものになってしまいます。

今までに個人的にも経験のない世界が、ヨットの上でタキシード姿でシャンペンを飲むおしゃれな世界です。(モナコのF1見物に行く世界のお金持ちがする格好ですね)。私も友人の結婚式がえりに略礼服に身をつつみ翌日の朝早くのレースに備え、前日の夜ヨットに泊まったことは有りましたが、服を汚すと家に帰ってこわい奥さんに怒られるのが目に浮かび、すぐにトレパンに着替え焼酎で酒盛りをはじめたのは言うまでもありません。一度は飛び切りおしゃれな事も経験したいと思う反面そんなパーティに呼ばれることもなく、でも窮屈そうだから一度経験したら2度としたくはないだろうなと、半分負け惜しみも含めて思うことにしています。誰か一度でいいから誘ってくれないかな。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部