日本シティジャーナルロゴ

免許更新

ヨット

ふだん全く使うことの無い小型船舶操縦免許の有効期限が切れてしまうことに気づき、5年に1回の更新手続にでかけました。更新手続は、簡単な講習を受けて視力の検査を受ければOKです。講習は財団法人海洋レジャー安全振興協会という旧運輸省の天下り先としか思えないような組織で開催しています。自動車免許でいえば交通安全協会と同じような構図が海の免許でもしっかりと出来上がっています。更新にかかる費用は合計で3,890円と、声を荒立てて文句を言うほどでもない微妙な価格設定がされています。講習会は地元成田国際文化センターで、日曜日開催分に参加しましたが、約50名の受講者のうち女性は1名のみ。船の免許はまだ20年前の競馬場のような雰囲気が漂う男の世界でした。

5年前から免許制度も改定が加わり、免許の区分も変り、今まで私の持っていた4級免許では5トン未満の船しか操縦できなかったのが20トンまでの船舶は操縦できることになり、ちょっと得した気分です。また、一番大きな変更点(私が思うところですが)は飲酒運転についての制限です。今までは一切飲酒運転についての規制はなく、どんなに酔ってもつかまることはない酒飲みにとっては天国のような制度だったのですが、今回の改正で“酒酔い操縦等の禁止”と明確に規制されることとなりました。しかし、よくよく文章を読んでみると“飲酒などの影響により、注意力や判断力が著しく低下しているなど、正常な操縦ができないおそれがある状態で、操縦されることは禁止されます”とあります。ということは飲酒自体を規制しているのではなく、「飲酒した結果、正常な操縦ができない状態で操縦してはいけません」ということです。昔から船乗りは気付け薬としてラム酒を飲むことは良く知られています。実際、冬の寒い中、心底冷え込んだときに飲む一杯のアルコールは体を芯から暖め、その後舵を握って航海を続けるための一番の特効薬です。このアルコールを全面的に禁止するという極端な規制はせず、かといって野放しで酔払い運転については一切お咎め無しということにもいかず、折衷案としてできあがったことがよくわかる表現になっています。自動車とは違って酔っ払い運転で事故を起こすと、大怪我をしたり最悪命を失うことになるのは、ほとんどの場合自分自身です。どんな状態であろうとも、免許制度にどんな記載があろうとなかろうと、船を安全に操縦していくことには自分自身で責任を持たなければいけません。

また、もう1点、今までは免許を持っている人が同乗していれば実際の運転は誰が行っても構いませんでした。今回の改正ではこれについても若干の改訂があり、港内や航路内は免許を持っている者が直接操縦しなければなりません。しかしここにも但し書きがあり、組織運行が前提の漁船や帆走中のヨットなどは除外となっています。まことにもってヨット乗りの私としては納得のいく但し書きをつけて頂いたと感謝する次第です。実際問題ヨットの場合はヨットを実際に上手に操縦できる人でも免許を持っていない人がいたり、反対に免許は持っているものの風が強いと危なっかしい人がいたりと、免許と技能は比例していないことが多々あります。所詮免許、されど免許ということで免許は引き続き保有していくことになりますが、本当の意味での海の免許皆伝はまだまだ先のことと自覚し、これからも経験を積んでいきたいと感じた次第です。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部