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中国は日本の親しい友好国となりうるか? PART II
お互いが必要としあっていることに気が付くことが友好関係の原点

日本と中国は仲良くなれるのでしょうか?血を分けた兄弟同士、日本人同士でも争いごとは起きるのですから、ましてや海を越えた他国とは、そう簡単に友好関係が保てる訳がありません。日本人というだけで、中国では冷たい目でみられたり、物を盗まれたり、色々な事故に遭遇することが多いと言われるのが、昨今の中国の旅行事情です。特にここ最近はクレジットカードをスキミングする偽造事件が後を絶ちません。スキミングとは財布の中からカードのデータだけを読み取られ、偽造カードを作られて利用されてしまうことをいいます。所有者は盗まれたという認識がないまま、知らぬ間に自分のカードが高額なショッピング等に悪用されてしまうのです。その上、中国本土における昨今の反日感情を剥き出しにしたメディア情報の氾濫や、東シナ海の海底開発等の国境に絡む問題から察するに、日本と中国双方の国民感情は改善する兆しが見えません。むしろ悪化の一途を辿っているようにさえ見えます。

このような背景の最中、幾度となく苦い体験を中国で繰り返してきたにも関わらず、それでも筆者は、ますます中国が好きになってきたのです。

外国人を受け入れる心のゆとり

まず中国の経済が目覚しく発展し、特に湾岸沿いを中心とした大都市での生活が潤うことによって中国人民の心にゆとりが生まれ、それに伴い、日本人を含む外国人に対する態度がここ最近、著しく変わってきたことが伺えます。空港の入国管理を始めとし、市内のお店やホテル、タクシー乗り場等、以前は冷たい視線や、そっけない対応、迷惑そうな表情しか印象になかったものが、今では笑顔を見ることも少なくありません。また英語が話せる人が急激に増えてきた、ということも旅行者のもてなしを大事にし始めたことの現れでしょう。無論、その延長線には2008年の北京オリンピックがあります。

時間が経つにつれ、戦争という辛い過去を知らない世代が中国人口の多勢を占めるようになってきた今日、高いレベルの教育を受ける若い世代層も厚みを増し、海外へ渡航する中国人も急増しています。また日本語を勉強したり、日本を訪れて日本の文化に対する理解を深めようと好意的にアプローチしてくる方も年々増加しています。中国経済がその門戸を世界に開放し始めたことをきっかけに、彼らの心も開かれ始めたのです。それ故、日本人にとって親しみ易い国の一つとして中国がリストアップされても、もう不思議ではありません。

中国料理は何といっても最高!

日本人が中国文化に触れる一番のきっかけは、何といっても食文化につきます。国家経済の発展と共に人民の懐も潤ってきたのでしょう。中国ではどの町でも、日本では考えられないような巨大なレストランが多数存在し、その多くが常時満席という活況ぶりです。これらの大型レストランの殆どは、いわゆる大食堂的な大部屋と、8人から12人程が一緒に食事できる個室から成り立っています。個室は通常、ミニマムチャージがあるだけで、食事や飲み物をふんだんにオーダーすれば誰でも利用できます。

筆者が大好きなレストランは広州市から車で30分程行った番禺(バンユー)という中堅都市にある動物園内のチャイムロングホテル。このホテルはロナウド、ロナウジーニョ等のブラジル代表サッカーチームが泊まったホテルとしても知られています。とにかく、料理が美味しい!北京ダックをオーダーすれば、目の前でシェフが見事にダックを丸ごと1羽さばき、アシスタントがそれを皿に盛り付けて、気をきかせながら配膳してくれます。その他、飲茶料理や、野菜の炒め物、魚のスチーム焼き、海老の刺身など、日本人好みの味が勢ぞろいです。また、辛い料理が好きな人には四川料理がお勧めです。ある時、接待を受けて「辛い料理はだいじょうですか?」と聞かれ、激辛カレーにも通じている筆者が承諾したところ、真っ赤な唐辛子を野菜と一緒にぐつぐつと煮込んだ、ドロドロの激辛煮込みスープを飲むことになってしまいました。かつてこんな辛いものは食べたことがない、というような辛さで、汗だくになってヒーヒーと嘆きながらも、だんだんとその美味しさにはまってしまいました。

一つ、中国で気をつけなければならないのは、食べている食材が安全かどうかです。野菜の大半は汚染されている可能性があり、また魚や海老も、汚染された河川で水揚げされたり養殖されていることが考えられ、人体にどういう悪影響を及ぼすかわかりません。それ故、中国で食事をする際は、何はともあれ余計にお金を払ってでも、まともなレストラン、ホテルで食することが鉄則と言えるでしょう。

KTVカラオケが中国娯楽の筆頭

食事の後は娯楽です。中国の方々はナイトライフをどう過ごすのでしょうか。国が広いだけに繁華街もまばらです。無論、地域差もありますし、経済格差によって娯楽の形態も異なるようです。新興都市では一般的にKTVと呼ばれるカラオケパブが圧倒的な娯楽の中心となっています。KTVは報道されたように、確かに売春の温床となっているようですが、ここではその存在を是認している訳ではありません。あくまで現地において、中国の方たちが自らの楽しみとして、積極的にKTVを活用しているという事実に着目しています。

カラオケはもともと日本の専売特許であり、日本から中国に輸出された技術です。そのカラオケパブ、喫茶が、どの町にも存在するほど、中国各地に普及しています。カラオケで歌われる曲は、中国の歌謡曲を中心として、日本の歌謡曲や欧米のポピュラーソングが含まれます。特筆すべきはテレサ・テンの人気のすごさです。既に亡くなってから11年も経っており、台湾生まれながら日本で大スターとなったテレサ・テンですが、実は彼女の知名度は中国でも大変高く、日本で流行した歌は勿論、全て中国語に翻訳されており、誰もがそのメロディーを口ずさむほど人々の心にしっかりと根付いています。

中国人民が、日本で流行した歌を口ずさみ、カラオケを通じて日本の歌謡文化に触れ、そしてテレサ・テンを同じ中国人として誇りに思っている姿を見るとき、不思議と日本と中国とは切っても切れない絆で結ばれているように思えます。カラオケを通じて、歌の世界で日本と中国が通じ合う、そんな現実があることを、何となく嬉しく思うこの頃です。

成田のルーツも中国にあるのか??

成田山新勝寺は、国内屈指の参拝者を誇る著名なお寺です。この新勝寺のルーツは弘法大師空海です。この成田シティージャーナルの事務所がある不動ヶ岡という地名も、実はその名前の由来が空海にあり、参道とJR線が交差する角にある小さな参拝跡地には、空海がこの地に訪れた史実の詳細が記されています。

弘法大師空海は遣唐使として中国にわたり、真言密教の基礎となる様々な宗教文化を大陸で吸収しただけでなく、帰国後、その延長線には、いろは歌づくりや、教育施設の創立、治水工事、そして日本語としてのカナ文字、平仮名の創作がありました。これらの経緯を踏まえれば、誰もがその恩恵を中国文化に感じない訳にはいきません。

また成田には古墳時代終末期に作られた、国内でも最大級の大型方墳である岩屋古墳が風土記の丘に存在します。それに隣接する県立房総風土記の丘には古墳が110基以上も存在します。これらの古墳、及び出土された各種埴輪を見る限り、古代の住民は大陸から日本に移民してきた豪族に他ならないことがわかります。これらの埴輪は、朝鮮半島や中国で出土されたものと類似しており、成田のルーツに大陸文化が深く関わっていることには違いありません。それ故、中国にゆかりを覚えると同時に、知れば知るほど、中国の偉大さを感じないではいられません。

中国も日本もお互いを必要としている

仮に日本から中国文化を取り去ってしまったら、一体どうなるのでしょうか?街中から中華料理やラーメン屋が消え去り、漢字が無くなって新聞や雑誌が平仮名と片仮名だけになってしまう…そしてユニクロが消滅し、Tシャツ1枚が2000円に逆戻り。その結果、物価が高騰。またホンダやSONYなどの日本企業は中国から撤退し、業績悪化懸念が広まるなど、恐らく日本国民の生活は混乱してしまうでしょう。

中国にとっても同じことが言えます。今日の中国経済の発展は、日本からの経済協力と優れた技術力の提供によって成り立っている側面を否定できません。それ故、中国から日本を消し去れば、カラオケが無くなり、日本製の家電や自動車、コンピューターゲームも無くなるだけでなく、その他の日本の高い技術力を誇る各種パーツや商品が事実上、市場から消滅することになります。また食生活ではレストランから中国人が大好きな刺身とわさびが消え去ってしまいます。特に最近、中国の若者の間では「ドラえもん」や「ドラゴンボール」「NANA」など、日本の漫画やアニメ、コスプレが流行っており、日本ファンが急増しています。もし中国から日本の作品が無くなったら、これら若者文化も中国から消えてしまうことになるでしょう。

日本も中国もそのルーツから、兄弟のような関係にあります。元は仲の良い兄弟だったからこそ、喧嘩も多くし、互いにいがみあってきた時期もありました。実の兄弟や親族でも、喧嘩の果てに裁判沙汰になることもありますから、国家同士が対立するのはむしろ当たり前として捉えられるべきです。

結論はただ一つ。日本と中国は潜在的な仲間であり、互いに支え合うパートナーなのです。しかし歴史の不幸を背景に生じた大きな亀裂を完全に修復できないまま今日に至っています。だからこそ、声を大にして叫ぶべきです。日本も、中国も、お互いを必要としているのだと。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部