ブックタイトル日本シティジャーナル vol.191

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日本シティジャーナル vol.191

2018年(平成30年)9月29日発行第191刊毎月第3土曜日発行購読無料vol. 191新しい奥坊主の標識を打ち立てる!こもかしこも似たようなものばかりで、行ったり来たりの繰り返しがありました。そして11時45分、ついに尾根づたいから奥坊主へと向かって谷を下りる地点にまでやってきました。2回目のチャレンジでは小川や小さな滝を見つけましたが、その周辺は行き先がわかりづらかったことから、今度はアプローチの角度を変えて、GPSを見ながらもう少し直線コースで進むことにしました。それにしても本当にわかりづらく、自分がどこにいるのかさっぱりわからなくなるばかりで不安がつのる最中、崖や岩場を避けながら足場の悪い急斜面を神経を尖らせながら斜めに進んでいくと、突然、枯れ木の広場が見えてきました。そして12時50分、ついに光明が見えてきたのです。それまで原生林を歩んできたのにも関わらず、奥坊主にかなり近づいてきたと思われるその小さな広場の先には、突如として人が歩き続けてきたと思われる山道が現れたのです。明らかに長年、多くの人が歩いてきた形跡のある山道が、奥坊主へ続く最後のアプローチにのみ存在していたのです。これは正に、古くから奥坊主には多くの行者が集っていたことの証ではないでしょうか。山道の確認と共にその狭い道を早足で進んでいくと、徐々に両側の崖の幅が狭くなってきたことから、奥坊主が目前に迫ってきたことがわかります。もう迷うことはありません。あとはひたすら前に進むだけです。最後の上り坂を一気に進むと、ついに奥坊主と呼ばれる最終地点に到達しました!単に樹木に囲まれた10数坪にしか見えない小さなエリアですが、そこが古代の聖地かと思うと、何かしら熱い思いが込み上げてきます。そして持参した奥坊主の標識をリュックから取り出し、杭にねじ止めしてハンマーで地表に打ち付けました。新しい標識の打ち立てに成功!我、奥坊主にあり!その後、すぐにUターンして戻ることとし、奥坊主から出発しようと立ち上がった瞬間、大きな黒い影がガサガサ、と目の前で動いたのです。まずい、熊か?と一瞬不安がよぎります。そしてそっと数歩、傾斜地を進むと、何と、自分をじーっと見ている大きな動物が、すぐそばにいるではないですか。初めてみる巨大な黒い動物。ところがどう見ても熊ではないのです。しかも馬のように大きく、牛のように体が太く、角はないが落ち着いた様相で立っているのです。自分からの距離は15mほどだったでしょうか。その正体は、天然記念物となっているカモシカでした。驚いたことに、奥坊主の頂上までカモシカが追いかけてきてくれたのです。というのも、その周辺には崖しかなく、いくら急斜面に慣れているカモシカとて、その頂上まで上ってくる必要はないはずです。とにかく、一生に一度の体験ですが、カモシカと挨拶を交わすことができて、ありがたき幸せと思いました。奥坊主にて天然記念物のカモシカと遭遇3度目の登頂チャレンジが成功し、それから必死の思いで、ビジターセンターまで足を運びました。その途中、倒木の枝に足をひっかけ、すねの部分を10c mほど深く切ってしまい、痛い思いをしました。しかしそれよりもとにかく、奥坊主へ到達できた喜びの方が大きかったのです。ただ悔いが残ることは、3度目も携帯電話で失敗をしてしまったことです。まず、予備のバッテリーの使い勝手が悪く、結局は使えなかったこと。そして3台持ち込んでしまったため、GPSの機能がうまく連携できず、せっかく撮影した画像と地図がリンクせず、YAMAPというサイトにこれら感動のコメントを画像と共に掲載することができなかったのです。が、奥坊主の日帰り登頂に成功した感激の1日であることに変わりありません。倒木をまたぐ際に足を引っ掛けて大怪我!奥坊主の意味を考えるレイラインの考察から見出した奥坊主ではありますが、その場所の意義は、実際にそこに行ってみて、初めて理解することができました。奥坊主はどう考えても単なる修行の場所ではないようです。その場所は、一度行けば帰ってくることができない、一方通行の場所ではなかったかと考えます。現代のGPSを用いても健脚の人が、かろうじて日帰りで行き来できるような奥地にあり、一般庶民が行けるような場所ではないのです。しかも奥坊主がある熊野の奥地は日中と夜の温度差が激しいだけでなく、雨量も多く、高山であるだけにすぐに霧に包まれ、周囲が見えなくなってしまいます。つまり、奥坊主へ行くということは、熊野から抜け出すことができなくなる危険を常に孕んでおり、そこで死ぬ覚悟がなければ到底行けない場所のように思えてきたのです。奥坊主とは、神様に祈りを捧げ、そこで人生の最後を遂げる覚悟をもった人のみ到達できる、行者の最終修行地であったと考えられます。古代の民は、その場所が富士山と神島、琵琶湖の竹生島、そして金刀比羅神社に結びついていることに安堵し、そこで生涯を全うするという思いを馳せて、熊野の秘境を訪れたのではないかと推測します。つまり、奥坊主は聖者の墓場でもあったのです。大勢の聖者の遺骨が、奥坊主の崖の先に埋もれているのではと思うと、熊野の長い歴史の重みを感じないではいられません。(文・中島尚彦)全国各地の音楽シーンを応援楽器・音響・照明機器ならサウンドハウス国内最大規模のECサイトを運営。海外著名ブランドの正規代理店として、ユーザーを熱烈にサポート。LINEやInstagramなどのSNS媒体を通じ、最新の音楽情報を全国に発信中!We loveSound Houseよいとこプロジェクト西日本豪雨復興支援2018年、サウンドハウスは、「YOITOKOプロジェクト」を始動。人々の心をつないでいく音楽の力、全国各地の“YOITOKO”(良い所)そして人や街の魅力を伝えていきます。「魂」で音楽を創るアーティストを発掘・応援TuneCore Japanとタッグを組んでオーディションを開催被災した楽器、音響・照明機材の無償修理を行っています。お知り合いの方でお困りの方がいれば、ぜひご連絡ください-4-