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自治体に自由を与える大合併!
市民がアットホームに感じる身近な行政を実現しよう!

昨年11月に成田市の合併について成田市より市民1万人に対してアンケートが配布されました。この市民アンケートは簡単な14項目にわたる質問にまとめられていましたが、その内、合併に関わる質問は10問のみでした。膨大なコストと時間をかけて1万人の市民に配布するには余りにも少ない質問数とその内容の薄さにいささか驚いてしまうと同時に、このアンケートには明らかに幾つかの短所があります。

市民アンケートに物言いあり!

問5 市町村合併についてどの程度関心がありますか。

この質問に対して「関心がない」という答えを選んだ人は所詮合併について興味がない訳ですから、合併に関する質問事項は飛ばして別セットの質問を用意し、回答者の真意を探る必要があります。アンケートの問いに対して興味がない人にいい加減に答えを書かれたデータは、当てにできなくなります。むしろ知りたいことはなぜ合併問題に関心が無いのか、どうしたら関心を持てるか、ということですからその回答を得るための質問を構築するべきでしょう。

問9 市町村合併を考えるにあたって、どのようなことが必要だと思いますか?

全国各地における市町村合併から明らかになっていることは、一般的に住民は合併に関する情報を十分に持っておらず、自治体の働きさえその内容を把握していないということです。それ故アンケートでは本人が実践している情報収集のレベルをまず確認するべきですが、ここでは合併の参考資料として何が必要かということだけ問われています。市役所発行のパンフレットやタウンミーティング、説明会、合併後の構想プランの提示等、アンケートに挙げられている選択肢はどれも(本紙も含めて)既に出来上がった信条に基づいて世論を誘導する為のツールに他なりません。例えば市長主催のタウンミーティングも、その実態は合併に関する基礎知識を市民に提供すると言うよりもむしろ、如何にして市長が唐突に提示した2市4町案を理解して頂くか、という市長案の説明に終始しているように思います。成田市合併の根底にある問題は、市民の多くがその基本資料を十分に理解する機会を与えられないまま、その合併案に振り回されていることです。

本来、合併問題を学ぶにあたって市民が必要とする基本資料は3種類あります。まず市町村合併について国が発行している資料、特に特例市や中核市となるための条件とその後の権限の委譲に関するデータが基本となります。次に全国各地で既に実現された市町村合併のケーススタディーです。既存都市が合併した後の結果を分析することにより、成田市の将来が見えてきます。そして最後に様々な意見、見解に基づいた各種合併論の比較検討データです。

市民が参考としたい資料をもう1つ加えるとするなら、それは成田市の合併について、対立する意見を主張する政治家や識者の討論会を聞くことです。白熱した論議が交わされる場を市が提供することにより、夫々の主張、利点、欠点等、今まで市民に見えなかった部分が見えてくるようになります。しかし自己の主張をきちんと整理して討議できる政治家が少なく、その結果透明度の低い政治がまかり通っているのが現状です。

問11 成田地域の市町村合併に関してあなたが一番良いと思う考え方

合併地域に関する意見をこの1問だけでまとめようとしているのですが、意図的かどうかは別として2市4町案を選びやすいように答えが提示されています。まず6ヶある答えの内、半分の1-3までが2市4町という文字から始まるためその言葉のみが目立ち、しかもそれ以外の具体的なプランは一切省略されています。次に2市4町以外の合併案については、生活圏や空港圏の項目の中に各市町村を列記して市民が個別に選択するようにし、答えを複雑に分かりづらくしています。平等な意見を求めるならば、2市4町案の事は記載せず、「成田市と合併する対象として考えたい市町村に印をつけて下さい」と聞けば良いはずです。2市4町案のみに焦点があたること自体、世論操作と言われかねません。

アンケート調査の結果を都合の良いように操作することは難しくありません。例えば、大型合併派の意見に調査結果をまとめたい場合は以下のような質問を市民アンケートに追加します。

問A 住民の意向を反映しやすい身近な行政を行うために必要な権限を国から委譲することができる人口30万人強の中核市を成田は目指すべきでしょうか?

問B より多くの権限の委譲が約束される中核市への移行が視野に入る2市8町1村案と、中核市と比較して制約の多い人口20万人弱の特例市を目指した2市4町案とではどちらが良いですか?これらはどちらも質問の中に答えを暗示する要素を含めているため、暗黙の内に浮動層の票を動かすことができます。このような世論操作は極力さけなければいけません。

もっと自由を得るためにより大きな合併を目指す!

誰でも自由が欲しいです。他人から干渉を受けず、自分のことは自分で決めたいと思います。行政も同じです。周囲の市町村から干渉を受けず、また県や国からもがたがた言われずに市政に関わることは自ら決めたいと考えて当然です。一見矛盾しているように思えるかもしれませんが、実はそれが大型合併を試み、人口30万人以上の中核市を目指す一番大事な理由です。ところが合併にはどうしても周囲とのしがらみがあるために、少しでも弱い立場に置かれると悲観的な見解に流されて拒絶反応をおこしてしまうことがあります。

NCJの事務所には連日のように色々な意見が寄せられますが、稀に合併反対の意見を頂きます。つい先日も神崎町の読者から「大反対」というお手紙を頂きました。その理由は成田の外れにある神埼は所詮、「成田のゴミ捨て場になる」「目が行き届かないのでどうでもいい存在になる」ということでした。気持ちはわからなくもありませんが、国内の自治体の多くが債務過多に陥っているというシビアな現実を冷静に考えて頂きたいものです。一般企業ならば当然のことながら債務免除を金融機関にお願いしながらリストラを続け、減資や資産売却を試みつつ業績の回復に努めます。また資産効率を向上させるために企業同士の合併を試み、時には外資に買収されることもあります。企業と全てが同じというわけではありませんが、行政も同様にして例え編入合併であっても良い結果を生むことができます。そのチャンスを拒むことこそ自治体を経済的窮地に追い込むだけでなく、最終的に自由を全て奪う行政破綻という結末に至る恐れがあります。正に自由を得るために合併という手段を用いるのです。

30万人中核市こそ成田市が目指す道!

多くの都市が30万人の中核市を目指す理由は、行政の事務権限が強化され、住民に対してより身近でスピーディーなサービスを提供できるようになるからです。中核市では街造りの基本となる都市計画事務や、保健所の事務を任意に処理できるだけでなく、特に福祉、民生行政分野において本来は知事の認可や承認等を要する事務であってもその必要性が無くなり、直接主務大臣の監督下に置かれます。例えば保健所を設置する権限を持って、伝染病、医療や食品衛生法に基づく事務を始めとし、児童福祉法や理容師法、温泉法、更には旅館業法や廃棄物の処理に至るまでの事務を管轄する自由が与えられます。また福祉においては身体障害者手帳の交付を行い、老人福祉法に基づき養護老人ホームの設置や認可、監督をする権限も与えられます。そして都市計画法に基づいて市街化区域内の開発行為を許可する権限や宅地造成工事の許可、及び屋外広告物の条例による設置制限まで監督する権限が与えられます。これが正に中核市となった暁に体験できる市民に身近な行政の側面です。

人口23万3千人の岩手県盛岡市は中核市を目指して平成4年4月に人口4万2千人の都南村を編入合併しました。平成3年8月に法定合併協議会が設置されてから8ヵ月後に合併が実現したわけですが、実際は平成元年には合併問題検討協議会が発足しており、それ以前の昭和44年には盛岡市長が都南村長に合併を申し入れた経緯もあります。合併実現後は都南村の懸念事項は払拭され、盛岡市のベッドタウンとして発展していくことができました。また都南村は以前より水源確保の問題を抱えておりましたが、大型ダムを持つ盛岡市との合併によりその不安が無くなり、全体的に都市化の整備が進むことになったのです。

同様に茨城の水戸市も23万人都市である時に人口1万人余りの常澄村に対して自ら合併を申し入れ、数年で編入合併が実現しています。常澄村も水戸市に編入された結果、最終的には「イメージアップ」の恩恵を受け、道路や下水道等の社会インフラの整備が以前よりも進んだだけでなく、高速道路のインターも含めた整備が進みました。

大型の合併を目指すことは、目先の経済的な負担増や自由を束縛されるような錯覚に陥りがちですが、実態は違います。大型合併がもたらす経済面のプラス効果はマイナス面を遥かに上回るだけでなく、行政監督という意味において自由度が増し加わり、より市民に身近でスピーディーな市政を実現することができるようになります。

成田市の歩むべき道はただ1つしかありません。それは限られた権限しか与えられず、「成田国際空港」の町というレッテルだけ貼られて自己満足に陥る微弱な20万人の特例市ではなく、名実共に千葉県の中核を成し、国家の発展に大きく貢献する原動力の一部となる30万人中核市となる道です。市民の誰もが願う平和で明るい未来を築くためにも、新生成田市が中核市となることを願ってやみません。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部