日本シティジャーナルロゴ

アンチエイジングの旅 Part.III
アンチエイジング療法に潜む危険な落とし穴とは何か!

今や流行語にもなったアンチエイジングは、新世代の医学スタンダードとなるべく、人が健康に生き永らえる為の秘訣を提言しています。アンチエイジングの真髄は、体の老化を最小限に食い止め、「体の中の若さ」を保つことに尽きます。そして体の「中」という言葉に表現されているように、アンチエイジングの医学は見かけの若さではなく、体の内面から若返ることの重要性に着目し、それを実現するための処方箋を説いています。

日頃から、適度な運動を含む規則正しい生活と、栄養価の高い食生活、そして十分な睡眠という3本柱の教えを地道に守ることが何よりも重要であるというのが、アンチエイジングの基本的な教理です。その上で、現代人の多くが抱えるストレスレベルの管理も視野に入れ、如何にして、より若く、活き活きと人生を過ごすことができるかを追求するのです。つまり、生活習慣の改善こそが、アンチエイジング療法の本筋といえるでしょう。

100歳まで生きるための22か条

世界各地で100歳以上の長寿を達成した人達には、22の共通点があることが、ヨーロッパで開かれた学会で発表されました。

  1. 生き続けたいという意志
  2. 環境変化への適応性
  3. 生きる意義の確信
  4. 活動的なライフスタイル
  5. 前向きな姿勢
  6. 悩みを抱えない性格
  7. ストレスの処理上手
  8. 強い自己決断力
  9. 良好な精神状態
  10. 高い教育レベル
  11. 周辺社会との繋がりの尊重
  12. 愛情・友情の実践
  13. 長い恋愛歴
  14. 家族との親密な生活
  15. 自由な意志表現
  16. 精神力の持続
  17. 歳を感じさせない存在感
  18. 信仰心
  19. 価値観や伝統の継承
  20. 生活の安定
  21. 規則正しい生活
  22. 充実した睡眠時間

いかがでしょうか。これらの22ヶ条が長生きの秘訣とするならば、現代社会を生きる日本人が、どれだけこの理想に近い姿で生活しているか、甚だ疑問です。むしろアンチエイジングの教えが流行しても、それは単に「若返り」という言葉だけが独り歩きするだけで、見せかけにこだわる療法だけがもてはやされているような気がしてなりません。

アンチエイジングの真髄は、薬物療法でもなく、美容整形でもありません。あくまで、この22ヶ条が提言している通り、日々の生活の中で、楽しみ、生きていて良かったと感謝しながら、できる限りの健康管理を、ごく当たり前に喜んですることなのです。

ぼろ儲けをもくろむ業者の横行

アンチエイジング療法には、幾つかの落とし穴があります。まず注意すべきは、多くの業者がアンチエイジングを金儲けの道具として利用していることです。若返りを目指すアンチエイジングは、美容整形の広告のキャッチフレーズとしてむやみやたらに使われることが多い為、いつの間にか、一般大衆がその本来の意味を理解しないまま、単なる美容治療に終始してしまう危険性が潜んでいます。例えば、インターネットのグーグルサイトで「アンチエイジング」を検索すると、トップページに表記される広告は、「お顔のシワたるみの改善」、「毛穴対策」、「オススメする美顔器」といった言葉で埋め尽くされています。これらはどれも、従来の一般的な美容施術に関するメッセージであり、体の内面から改善していこうとする本来のアンチエイジングの教えとは、一線を画しています。

ネット上の広告だけでなく、検索されたリンクを見てみてもNPO法人アンチエイジングネットワークhttp://www.anti-ageing.jpに代表される一部の専門サイトを除き、その殆どが美容クリニックを中心とした見かけの若返りを売り込む業者のサイトばかりです。つまりアンチエイジング・ブームに便乗し、美容関連業者が総動員で、しのぎを削りあいながら、顧客獲得に乗り出しているのが現状です。

これは単に、お金儲けを目論む業者が大勢存在するということだけが原因ではありません。実は、アンチエイジングに真剣に取り組んでいる研究者、医者側にも責任があるようです。医者という職業は天命のようなものであり、特にこのような新しい分野において活躍されている医者は、研究一筋で生きてこられていることもあり、世渡りが余り上手でない方も多いようです。その為、アンチエイジングのことは誰よりも知っているが、世間の諸事情には関心が無いとか、お金の怖さを知らず、実社会においてナイーブな対応しかできない先生方が多いようです。その弱みにつけこんで、世間知らずの医者の背後には、金儲けをたくらむ取り巻き連中が集まってきてしまうのです。それ故、例え医者が善意で一生懸命に医療を行っていたとしても、いつしかそれが、暴利をむさぼる道具として平然と利用されてしまうのです。特にシミ、しわ、豊胸等の見かけを美しくすることを目的とした治療は、万人にアピールするメッセージを持っていますので、アンチエイジングと絡めて広告宣伝する業者が後を絶ちません。その為、残念ながら現状では、本来のアンチエイジングの醍醐味を知ることのないまま、従来の美容整形と取り違えて高額な費用をつぎ込んでしまう消費者が後を絶ちません。

生活習慣の改善が困難である理由

アンチエイジングの2つ目の落とし穴は、どんなに素晴らしい目標を掲げたとしても、それを達成する方法が十分に確立されておらず、実践が難しいことです。これでは庶民を迷わし、時には落胆させてしまうことになりかねません。「規則正しい生活」という言葉に代表されるように、アンチエイジングが骨子とする「生活習慣の改善」は、当たり前のようでありながら、実はその理想レベルが高いといえます。早寝早起き、適度な運動、決められた時間の3食、そしてストレスからの開放など、誰でも実現できたらそれにこしたことはないと考えるでしょう。ところが現実は厳しく、特に昨今のネット社会では生活に関わる情報処理量が余りに多すぎ、ストレスレベルを下げることなど、至難の業です。

「生活悪習慣」という現代病にどっぷりとつかり、不規則で非健康的な生活に慣れきってしまった多くの人は、既に加齢が必要以上に加速する「プロエイジング化」の餌食となり、加齢対策を半ばあきらめてしまっています。そして時には、一旦やり始めた療法を継続できなかったという失望感が、更にトラウマになってしまうことさえあるようです。つまり、どのようにしてアンチエイジング療法に対するモチベーションを上げ、ひたすら前向きに取り組んで行くかが、アンチエイジング療法を成功させる鍵となります。言い換えれば、ストレスや、暴飲暴食、夜更かし等、生活悪習慣の根源となる家庭環境の崩壊や、教育環境の乱れ、職場での激務等、社会構造そのものにメスを入れ、アンチエイジングに敵対する抵抗勢力を一つ一つ、取り除かなければ、アンチエイジングの治療を始めても、長続きしません。アンチエイジングの教えが単に理想を掲げた荒野の叫び声にならないようにする為にも、ライフスタイルを改革する具体的な方法論の提言が必要でしょう。

ホルモン療法の副作用とは

アンチエイジング3つ目の問題は、フラッグシップであるホルモン補充療法の副作用にあります。ホルモン剤を用いた治療は、人体をその根幹からして若返らせてしまうことを目指しており、アンチエイジングの恩恵を100%受けるためには不可欠な療法です。ところが、このホルモン治療には多少なりとも副作用を伴うことがありますがそれについてあまり語られていないのです。 それはホルモン療法そのものが、医学的にまだグレーな分野であり、どの医者も語りたがらないという実態が背景にあるようです。ホルモン治療を受けている大勢の方々は、医者を始めとして多少なりとも副作用を体験している方が少なくないはずですが、それを話題にすることはタブーなのでしょうか?実際にはその副作用のデメリットよりも、ホルモン療法による治癒効果のメリットの方があまりに大きいために、ユーザーは使用の是非を問うことなく、その恩恵に甘んじているようにも思えます。

3ヶ月に渡るホルモン療法を受けた結果、筆者も副作用を体験しました。まず、治療開始後、目の下にあった小さなホクロが、段々と大きくなり始めたことに気がつきました。最初の内は気になりませんでしたが、その内、目立つ程大きくなり、最終的には直径5mmを超えるまでに至ってしまったのです。これにはさすがに驚き、悪性の腫瘍かとも思い、ホクロの摘出手術を受けて切り取ることになりました。ホルモン剤は、自分の体に馬力をみなぎらせると同時に、ホクロの細胞までも活性化して、肥大化させてしまったのです。

更に困ったことに、今度は左の乳首にしこりができ始めました。これも段々と大きくなり始め、明らかに左の胸の方が大きくなり、そして最終的に直径7-8mm程のしこりとなりました。痛みは伴いませんでしたが、、結局、地元の内科医と相談しました。そして、あるホルモン剤の注射を打てば消えるはずです、と言われ、その注射を1回だけ打って頂きました。すると、確かにそれから数日もしないうちに、しこりが小さくなり始め、いつの間にか消えてしまったのです。どう考えても、これでは自分の体がホルモン漬けになったことの証でしかないようです。

それでもアンチエイジングの教えは重要

ホルモン療法による副作用まで体験した筆者ではありますが、それでも、アンチエイジングから受けた恩恵によるプラス面の方が遥かに勝ると考えています。特に成長ホルモンの補充により、もっと「元気」で、より「若々しい」自分に戻ることができたことは忘れられません。それ故、どんなことでも簡単にあきらめずに、やってみようという前向きな思いになり、結果として生活習慣の改善が実現したのです。今後も、アンチエイジングの教えが正しく普及していくことを願ってやみません。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部