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第60回 自分の健康は自分で守る
嫁に対する姑の気配り

秋にまつわる慣例句は数々あります。「天高く馬肥える秋」「秋茄子は嫁に食わすな」「秋風が立つ」などは日常会話の中でも、よく耳にすると思います。

さて「天高く馬肥える秋」ですが、夏の間は空気が湿気を帯びているため、晴天であっても淡い白さがかかっていることが多く見られますが、秋になると天空の空気は澄みきって真っ青となり、いわゆる“日本晴れ”となります。

日本では、“秋が到来すると実りの季節を迎え、米などの穀類をはじめ、果物、野菜など食べ物のおいしい時期となります。となれば人々も食欲が増し、夏痩せしていた体も一気に肥えるよい時季である”というように伝わっています。実はこの慣例句の出展は、中国の古典『漢書』です。元の意味は、中国の北方に住む騎馬民族(蒙古族など)が秋までは馬を肥やし、冬になる前に黄河の流域の肥沃な土で収穫された農産物を文字通り馬力をつけて略奪を計画したという、漢民族にとっては農産物ばかりか生命と財産を略奪される、恐怖におののく秋だったのです。こうしたことから、中華民族は万里の長城という世界に類を見ない大建造物を完成させるに至るのです。

「秋茄子は嫁に食わすな」も諸説あります。世間では“秋茄子は実が締まっていて美味しいから、憎い嫁には食わすまい”とか“種が少なくて、子種がないと困る”からとか、“秋茄子は身体を冷やすから”と言われています。

以前にも書きましたが、女性器は身体内部にあり、男性器は外に出ています。それには理由があります。女性器は保温が、男性器はほどほどに冷やしたほうがその機能が活発になるのです。生活の知恵で、女性は湯文字を腰に纏い、男性は六尺褌を付ける。今の生理学を知らない時代でも、自然の道理を弁えていたことは驚きです。

茄子や食塩は、身体を冷やす作用があり、組織をひきしめる機能を持っています。それを収斂といいます。歯磨きに塩や茄子の黒焼きが含まれている製品をご存知でしょう。

“秋茄子は嫁に食わすな”の本意は、嫁は妊娠しているかも知れない。冷えたり、子宮が収縮して、私の可愛い孫が流産しては一大事。だから、“嫁よ、秋茄子は美味しいけれど、我慢して堪えてくれ”という優しい姑の言葉と思いたいです。

“秋風が立つ”は略しましょう。好い譬えではないのですから。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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