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第3話 ヤスリがけのススメ

あるウェブサイトに、「木工家とはザラザラなところをツルツルにしたい人である」というのを見ました。他で聞いたことがないので、単なるジョークだと思いますが、木工家を表現するのに非常に的を射た表現だと、妙に感心してしまいました。

木工の基本であるヤスリがけの作業は、まさしくザラザラをツルツルに変えていく作業と言えます。私自身、何時間木材を磨いていても飽きることはありません。なぜいつまでも磨き続けていられるのかと聞かれても明確な理由は思いあたらず、ただ「そこがザラザラだから」と、まるで登山家のように答えるほかないのです。

世の中にはストレスが溜まると靴を磨いて解消するという人もいるそうですが、ヤスリがけの作業にも似たような効能を感じることがあります。モノが綺麗になっていく過程で感じられる、独特の安らぎというものがあるような気がします。ぜひ一度、ホームセンターで色が濃くて硬い木を手に入れてじっくり磨いてみてください。目の荒いサンドペーパーから徐々に細かいものに変えていき、最後に400番くらいのサンドペーパーで磨いて、表面がツルツルになったら完成です。仕上げにオリーブオイルを塗れば完璧。そのころにはきっと、日ごろのストレスもどこかへ吹き飛んでいることでしょう。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

© 日本シティジャーナル編集部