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「抗加齢プログラム」 No.2 運動療法ガイドライン(2)

運動について大きな誤解をしている人がいます。例えば、スポーツクラブで20分間、トレッドミルでジョギングをしたと仮定します。「あなたの消費したエネルギーは30カロリーです」などという表示を見て、多くの方はその数字が予想外に少ないのに驚き「20分走ってもたった30カロリーじゃジュース一杯より少ないじゃないか。これじゃあ運動しても無駄なんじゃないの」と、運動療法をあきらめてしまった人もいるでしょう。それが大きな誤解なのです。短い運動時間でエネルギー消費が少なかったとしても、運動以外の時間の基礎エネルギー消費量は明らかに上昇します。それが抗加齢医学における運動の効果です。それでは前回の続きに入りましょう。

■その2:心血管運動

現在、最も一般的に行われている運動が心血管運動です。ウォーキング、サイクリング、水泳、エアロビクスなど持続的に行うことにより心泊数が増える心血管運動には以下のような好ましい効果が期待できます。

効果(1):体脂肪を減らす

エアロビクスなどの有酸素運動によって体に蓄積された炭水化物と脂肪がエネルギーとして燃料し消費されます。運動が長時間であればあるほど、激しければ激しいほど、燃焼されるカロリー量は多くなります。

効果(2):心臓発作のリスクを減少させる

血中のインスリン濃度が高くなると、それ自体がもつ「酸化作用」によってアテローム性動脈硬化症にかかるリスクが高まります。心血管運動はインスリンの血中レベルを下げ、心臓発作を起こすリスクを下げるのです。

効果(3):心機能を向上させる

心臓の機能がよくなれば、血圧が下がって脳卒中を起こすリスクも少なくなり心臓や血管に関する病気の予防にも役立ちます。アメリカ心臓病学会は、最低20分間の心血管運動を少なくとも週3日の割合で継続的に行うことを強く推奨しています。

効果(4):成長ホルモンレベルを高める

1991年に行われたW.クレマー博士たちの調査によれば、適度もしくは激しい心血管運動がヒト成長ホルモン(hGH)レベルを140~266%も増加させることが証明されています。これは、一度減少したホルモン分泌が心血管運動によってもとにもどることを示唆しています。

効果(5):睡眠の質を改善する

1997年に行なわれたスタンフォード大学、エモリー大学、及びオクラホマ大学の共同研究の結果、有酸素運動を週4回行うことにより4ヶ月後には眠りに入るまでの時間が短縮できたことが報告されています。また、こうした運動を続けた人々は、一般の人々に比べて睡眠時間が約1時間増えたことも確かめられています。

■その3:柔軟体操

ここでの柔軟性とは「体の関節部分をどれほど自由に動かせるか」と定義します。適切な姿勢をとるためにも年をとってからも体の関節を自由に動かすためにも柔軟体操がたいへん重要になります。また、体が柔軟であることはストレスの軽減、腰痛の緩和、ケガの減少にも貢献し、ストレス耐性も高くなります。単純に筋肉を使用するだけでも屈伸運動にはなりますが、柔軟な体を作るためには、インストラクターの指導のもとに本格的なストレッチプログラムを週3日~毎日行うことをお勧めします。柔軟体操には次のような効果が期待できます。

効果(1):柔軟性を高め関節をやわらかくする

体を柔軟にすることで、ほとんどの腰痛はよくなります。特に、股関節と膝関節の屈筋群を柔軟にすることがポイントです。また、関節を柔軟にして曲がる範囲を小さくしないことで、正しい姿勢を維持することができます。

効果(2):ストレスを軽減する

元体操コーチ「柔軟性の科学」の著者でもあるマイケル・J・オルター氏は「ストレッチ運動の利点の一つは、ストレスが軽減されることである。生理学的見地から言えば、弛緩とは筋肉の緊張がほぐれた状態であり、その緊張によってエネルギーは浪費される。筋肉を収縮させることが筋肉をリラックスさせることよりはるかに努力を要するからである。実際に体験してみれば、筋肉をリラックスさせた状態でいる方が疲労や筋肉痛を生じにくいことがよく分かるだろう」と言っています。

効果(3):腰痛を緩和する

腰痛の原因の一つに股関節屈曲筋の短縮と硬直があげられていますが、ストレッチ運動でこうした「筋肉をよく伸ばすことにより、腰痛が緩和されるという考え方は医学的にも正しいと言えます。

米井 嘉一(よねい よしかず)

米井 嘉一(よねい よしかず)

1958年東京生まれ。慶應義塾大学医学部卒。現在、日本鋼管病院内科・人間ドック脳ドック室長、(株)サウンドハウス産業医。
米井抗加齢研究所所長(http://www.yonei-labo.com/) Anti-Aging Medicine(抗加齢医学)の伝道師としてテレビ、ラジオ、雑誌等で活動中
日本抗加齢医学会HP

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