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パーマカルチャーとは ?

千葉の埋め立て地で生まれ育ち、都内で普通のOLとして過してきた私にとって、ジャングルに足を踏み入れることはもちろん、土や虫に触れるといった経験すら皆無に等しかったのですが、アボリジニ居住区での体験によって、ガラリと世界観が変わりました。以前の私は、野菜はスーパーで買うもの、家は大工さんが建てるもの、下水は処理場の人が何とかしてくれるものといった具合で、特に普段の生活で意識に留めることはありませんでした。しかし居住区の中では、野菜作りや家造りも当たり前に行われ、山の上に住む人は排水にも気を使っています。山頂で汚れた水を流すことは、麓で暮らす人々の生活を壊すことへと繋がります。それは巡り巡って自分たちに廻ってくることになる。今も残される美しく雄大な自然は、住民たちによる慎ましい生活の証だと気づかせてもらったのです。

人類が誕生してから気が遠くなるような年月の中で、現在の私たちが直面している環境問題とは無縁の生活を送ってきた人々が持つ英知は、実は素晴らしいものなのではないか。昔の人が培ってきた生活するための当たり前の術を継承し、現代社会で活かしていくことが、産業革命以降、様々な苦難が襲いかかってきた地球に対して今の私ができる最大限のことではないかと感じるようになったのです。これはまさに私にとっての自己変革でした。

しかし私には、アボリジニに弟子入りし俗世界から離脱した生活を送る勇気も度胸もありません。では、自分には何が出来るのだろう ? きっと同じような考えを持ち、既に実践している方が他にもいるはず ! と文明の利器インターネットを駆使して思い当たるキーワードを検索してみると「パーマカルチャー」という新しい言葉に辿り着きました。

パーマカルチャーを実践している手作りの家には雨水を蓄えるタンクがあり、
排水はろ過され庭の植物に与えられている。

パーマカルチャーとは、タスマニア大学の教授であったビル・モリソンと生徒のディビッド・ホルムグレンが1979年に確立した理論であり、永続可能な環境を作りだすデザイン体系です(*)。環境に配慮しただけの生活ではなく、持続可能な無農薬・有機農業を基本とし、デザインする構成要素を関連付けて最も機能するよう適所に配置するところに特色があります。例えを見てみると、無農薬で自分が食べる野菜を育て、出た生ゴミは堆肥として再利用すること。集めた雨水で食器を洗い、汚れた水は砂利を経由させてろ過し、流れ行く先に水分を好む植物を植えるということが紹介されていました。

確かに自分の回りから循環型の生活を始めれば、外部から食料や水を調達するよりも、輸送の際に排出されるCO2量が軽減でき、結果的に環境に対する負荷を抑えることができる。そして何より農薬を使わないことにより大地を汚染することなく、地球にとっても自分にとっても安心・安全な食物を味わえる。パーマカルチャーを調べるにつれ、地球温暖化、水質汚染、土壌汚染、ゴミなどといった近代社会が抱える様々な問題の解決の糸口になるのではないかと思ったのです。そして、私がアボリジニの居住区で見てきたことに近いことが既に体系化され、学問として研究されていることに感動を覚えました。

パーマカルチャーという単語は、英語のパーマネント(永久の)・アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)からなるオーストラリアで誕生した造語です。偶然にも私はパーマカルチャー発祥の地オーストラリアにいて、しかも私が滞在していたケアンズがあるクイーンズランド州には、世界で初めてパーマカルチャーを基盤にしてデザインされたエコビレッジ“クリスタルウォーターズ”があるということを知ったのです。

  • *参考文献:「パーマカルチャー」ビル・モリソン著

茶洛

千葉県生まれ、ベイサイドのコンクリートジャングルで育つ。2003年オーストラリアに留学した際アボリジニの自然と調和した生活と出会い、衝撃を受ける。帰国後も循環型生活をライフワークとするべく活動中。パーマカルチャリスト。
※パーマカルチャーとは、オーストラリアで生まれた永続可能な環境を作りだすデザイン体系。パーマネント(永久の)・アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)の造語。

© 日本シティジャーナル編集部