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WWOOFing(最終話)

パーマカルチャーデザインコースを終えてから、私はWWOOF(ウーフ)を開始しました。ウーフとはWilling Workers On Organic Farmsの頭文字を取った言葉で、オーガニック農園などで労働する代わりに、宿泊と食事を提供してもらえるというものです。ウーフ組織は世界中にあり、まず5,000円程度の年会費を支払いメンバーになると、ホストの名前と連絡先が記載されている本がもらえますその中から、自分が行きたい場所を選び、直接ホストと交渉するという手順になります。期間は様々ですが、通常1週間以上を希望するホストが多かったと思います。ウーファー(ウーフをする人)の中には、キャンピングカーに乗って家族総出で参加をする方、私のような海外からのバックパッカー、または定年退職を迎えゆっくりと時間を掛けて旅を続ける高齢の方もいました。

オーストラリアのウーフホストは、パーマカルチャーや有機農園だけに限らず、ヨガ施設や仏教寺院、アボリジニ居住区内など、日本にいては、なかなか触れ合うことのできないような団体が多数登録されており、私にとってはリストを眺めているだけでもワクワクし、まるで新しい世界へのビザが発給されたように感じました。現地で暮らす人々を知るという意味では、ホームステイと似ていますが、自分の感性に合う場所を自らが選択し、共に働くことによって、より濃い時間を過ごすことができます(しかも、ホームステイほど高額な料金は掛かりません)。

ウーフをすることで、多くの方とのご縁を頂きました。ホストの方々は年齢も人種も農園の規模も異なりますが、彼らは畑を舞台にしたアーティストであり、独創的で、自分の信じる道をしっかり見据えて地道に歩んでいました。彼らの軸である部分は共通していて「自然を尊敬している」ということです。自分を愛し、家族を愛しているからこそ、自然を大切にすることを知っているのだと感じました。

行きついた背景は十人十色ですが、長期にわたり一般的な農業でアボカド農園を営んでいたホストの方は、日常的に農薬に触れているうちに、次第に体の異変に気づいたそうです。以後、農薬を使用しない農業へと完全移行し、今でも彼の農園にはアボカドや南国フルーツがたわわに実っています。彼は毎日1時間半くらい作業をしては、好きなフルーツをもぎ、そのまま食べながら糖度を測定するという理科の実験みたいなことをしています。

アボリジニ居住区から始まり、パーマカルチャーデザインコース~ウーフでの経験を経て、「私たちは、地球の循環の一部である」ということに気づかせてもらいました。考えれば当たり前のことなのですが、都会のコンクリートジャングルでの生活の中で、私はすっかり忘れていたのです。無農薬野菜を好みながら、虫に向かって殺虫剤を噴射するようなことは、いずれ自分に戻ってきます。死んだ虫をほかの小動物が食べ、更にはもっと大きい動物がその小動物を食べ…と食物連鎖が続き、その過程に蓄えられた毒素は濃度を増し、最後は私たちに返ってきます。あるがままに受け入れ、あるがままに生きること。自然の摂理を崩すことは、カルマとなり戻ってくる、これが循環のメカニズムということを忘れてはいけないと思うのです。

私がオーストラリアで見たものは、まだほんの僅かなことに過ぎません。日本を含め世界中には、循環型生活を送る方やエコビレッジ、コミュニティーが多く存在しています。そしてエコロジーという言葉で語られる以前から、先人たちが日常的に行ってきたことなのです。

型や名称に囚われる必要はありませんが、地球を耕しながら歩む旅「ウーフ」を通して、この広い世界というフィールドへ足を踏み入れ、循環型ライフスタイルを体験してみるのも良いかもしれません。

茶洛

千葉県生まれ、ベイサイドのコンクリートジャングルで育つ。2003年オーストラリアに留学した際アボリジニの自然と調和した生活と出会い、衝撃を受ける。帰国後も循環型生活をライフワークとするべく活動中。パーマカルチャリスト。
※パーマカルチャーとは、オーストラリアで生まれた永続可能な環境を作りだすデザイン体系。パーマネント(永久の)・アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)の造語。

© 日本シティジャーナル編集部