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囃子詞に秘められた謎
~甲信越地方の山々に響く、ヘブライルーツ民謡

甲信越地方の民謡でも多くの囃子詞が使われています。これらの囃子詞は関東地方の民謡と同様に、全般的に短いフレーズにまとめられています。まず日本アルプスの裾野で歌い継がれてきた踊り余興唄「ちょこさい節」から生まれたとされる、「安曇節」の囃子詞「チョコサイコラホイ」を検証してみましょう。

「チョコサイコラホイ」は、4つのヘブライ語によって成り立っていると考えられます。まず(tsekhok、チェコ)と発音するヘブライ語には「笑い」という意味があります。「サイ」は、おそらく「喜ぶ!」を意味する(sasah、サッサ)、もしくは「神を喜ぶ」の意でその語尾に「ヤ」を付加して「サヤ」が多少訛ったものでしょう。すると「チョコサッ(ヤ)」は、「笑って(神を)喜ぼう!」という意味になります。お祭りの場で、みんなで踊って唄うには、もってこいの囃子詞です。また「コラ」は「声」を意味する(kol、コル)に由来し、(bat kol)という「神聖な声」の意を持つ熟語があるように、この言葉の背景には「神」のニュアンスが含まれています。そして「ホイ」はヘブライ語の感嘆詞として使われている「あー!」という呻きの意味を持つ(ホイ)がそのルーツにありそうです。すると「コラホイ」は「あ!神の声」となります。つまり「チョコサイコラホイ」は、神の声を求めつつ、楽しみ、喜ぶことを唄った囃子詞だったのです。神聖な場で笑うとは失礼ではないか、と思われがちですが、旧約聖書にはイスラエルのダビデ王が神の御前にて喜び勇んで裸踊りをしたことが書かれてある通り、お祭りの場で笑って喜び、踊ることは、神の民としては何ら不思議ではない時代でした。

次に「天竜下れば」で唄われている「ホホイノサッサー」を検証してみましょう。「ホホ」はヘブライ語で驚く時に叫ぶ(ho!、ホ)の繰り返し、もしくは「栄光」を意味する(hod、ホッ)でしょう。「イノ」は「人間」「人」を意味する(enosh)で、「サッサー」は「喜ぶ」という意味のヘブライ語です。すなわち、「ホホイノサッサー」とは「ああ!人類よ、喜べ!」という感嘆の叫びだったと理解できます。

さて、長野民謡の伊那節で唄われている「ヨッサコイ、アバヨ」は、著名なヨサコイ音頭の名前と、「さよなら」を意味する「あばよ」という誰もが聞き慣れている言葉の組み合わせです。「ヨッサ」は「ヤシャー」「イシャ」「イッサ」という発音を伴うヘブライ語が「神の救い」を意味していることから、その同義語として使われていると思われます。また「コイ」は「生きている」「生ける」を意味する(khay、ハイ)がルーツにありそうです。子音のは強く喉から息を吐き出して発音する言葉なので、「ハイ」とも「コイ」とも聞こえます。すると「ヨッサコイ」には「生ける神の救い」という、神の救いの御業を誉め唄う意味がヘブライ語にあったことがわかります。

「アバヨ」にもヘブライルーツがあります。「アバ」は聖書にも明記されている通り、「父」を意味する言葉(aba、アバ)です。「ヨ」は「ヤーウェーの神」の代名詞となった「ヤ」または「ヨ」と発音されるヘブライ語です。この2つの言葉を合わせた「アバ、ヨ」は、何とヘブライ語では「父なる神!」という意味になります。つまり「ヨッサコイ、アバヨ」とは、「生ける神の御救い!父なる神よ!」と叫び求めるヘブライ語の信仰告白だったのです。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部