「適材適所」という言葉があります。これはもともと日本家屋や寺社などを建築する際に、「さまざまな性質を持つ木材を用途に合った箇所に適切に使用しなければ建物が長持ちしない」ということが語源だそうです。木材資源に恵まれた日本では、古くからこの適材適所を実践してきました。

たとえば高級家具材の代名詞とも言える「桐」。昔は女の子が生まれると庭に桐を植えて、結婚の際に箪笥や長持といった家具を作って嫁入り道具としたそうです。桐の家具は軽くて持ち運びやすいうえ、熱や湿気を通しにくいので中の衣類を傷めません。また、火災にあっても表面が焦げるだけで中までは燃えにくいという性質があり、なんと金属製の金庫の内箱にも利用されています。さらに、水を含むと膨張するので、消火の際に水を被っても引き出し同士の隙間が塞がるため、内部が濡れてしまうことも防いでくれます。

桐が家具材として利用されたのは、これらのことが科学的に検証されるずっと前のことですから、ただただ昔の人の知恵に感心するばかりです。本コラムでは、偉大な先達たちへの敬意を込めて、私が木工の中で出会った世界中の木材についてのお話をしていきたいと思います。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

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