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第4話 木の香り

木には、それぞれ独特の芳香があります。仏像や扇子の素材としておなじみのビャクダンは、お香の原料としても有名です。また、削るとバラの香りがすることからその名がついたローズウッド、さらにウォルナットやメイプル、ケヤキなど、どの樹種にもそれぞれに特徴的な香りがあります。慣れてくると少し離れたところで作業している人が何の木を削っているか、漂ってくる香りだけでわかるようになります。木の香りを嗅いだだけで、グレードや品質までわかってしまうという達人もいるほどです。外気に触れていると香りはだんだんと弱まっていきますが、少し削るとまた復活します。

木工作業では、一つの作品が完成するまでずっと同じ香りが続くので、一度使った木の香りはずっと記憶に残っています。私は、バニラのような甘い香りがするアフリカ産のパドック材や、最高級の木と言われ高級家具に使われるチーク材の香りがお気に入りです。また、ウッドデッキ用としてホームセンターでも売られている、ウエスタン・レッドシダーの香りもすばらしく、その香りが好きでシダーばかりを使用するクラシックギター製作家もいるくらいです。

木の香りは、木工作業の楽しみの一つですが、木の粉は吸い込むと体に有害なので、作業中は忘れずにマスクを着用して下さい。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

© 日本シティジャーナル編集部