日本シティジャーナルロゴ

第5話 木の重さ

木材には重いものから軽いものまで、様々な種類があります。軽い木材の中で最も有名なものがバルサです。バルサの重さは水を1とすると0.1~0.2くらい。模型飛行機などの工作用としておなじみですが、軽い割に強度があり、実際の航空機にも使用されていました。バルサとはスペイン語で「イカダ」を意味するそうですが、その強力な浮力は救命胴衣などの海上用具に、いまでも利用されています。バルサほど軽くないにしても、木が水に浮くことは広く一般に知られています。しかし実際には水に沈むような重い木もたくさんあります。世界で最も重い木材と言われる中米産のリグナムバイタの重さは水1に対して1.2~1.3。実際に持ってみると、とても木材とは思えないズッシリとした重みがあり、うっかりこの木でイカダを作ったら大変なことになります。

これだけ重さが違う木材ですが、意外なことに木材繊維自体は木材の種類に関係なく比重約1.5でほとんど変わりません。木材の重さに差が出るのは木の細胞内の空気の量が違うからで、軽い木は空洞の割合が多く、重い木は中身がぎっしり詰まっているというだけにすぎません。実際、木工作業で出たおが屑を袋いっぱいに詰めると、軽い木の屑も重い木の屑もほとんど同じ重さになるのです。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

© 日本シティジャーナル編集部