木を食べる

木のまな板を長い期間使っていると、真ん中が削れて凹んできます。削れた分はどこに行ったかと言えば、あまり考えたくはありませんが、おそらく料理と一緒に食べてしまっています。まな板の素材もいろいろですが、毎日少しずつ食べなければならないとすれば、やはり木製を選ぶ人が多いのではないでしょうか。すり鉢と共に使う「すりこぎ」もまな板と似たような境遇にあります。すりこぎの素材としては山椒材が最高と言われますが、これは山椒の木に薬効があるとされていることや、削られて混ざった組織の食感が良いなどの理由があるそうです。こちらは一緒に食べることが前提になっていることに驚かされますが、実際のところ食感を感じるほどには削れないと思うので、これは俗説がなんとなく広まってしまったものかもしれません。ホンジュラス・マホガニーなどの銘木の中でも、グレードが高いものは見た目にも美しく、じっと眺めているとなんだかおいしそうに見えてくることさえあります。もちろん人間は木を食べることはできませんが、反すう胃を持つ牛などの一部の草食動物は、セルロースを消化する特別な菌を持っているために木を食べることができるそうです。実際、木材を加工して牛の飼料とする研究も進められ、木材飼料で育てられた牛は脂身の少ないヘルシーな肉質になることもわかっています。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

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